3党声明で国労が臨時大会を招集
争議に介入する政権与党の不当労働行為

(インターナショナルNo.126/2002年5月掲載)


 国労は5月15日の中央執行委員会(中執)で、今月27日に臨時全国大会(臨大)を開催することを決定し、翌16日には「声明に対する国労の態度を明確にした臨時大会を開催すべき」との社民党の判断を受けて臨大を開催するというだけで、議題も(1)不採用問題の解決にむけて、(2)その他としかない臨大招集の指令(第11号)を発した。冒頭にある声明とは4月26日、自民・公明・保守3党が出した「JR不採用問題に関する声明」のことで、これは後述する。
 ただこれまで国労の全国大会は、代議員の勤務調整などを考慮して一カ月程前に決定・通知されてきたこと、さらに議題の内容さえ明らかにしない招集という異例の事態は、27日の臨大が尋常ならざる大会であることを示唆するものであろう。
 本紙が発行されるころは、すでに臨大の結末は明らかになっているだろうが、国労中執が臨大招集を決定するまでの経過をふり返れば、その「尋常ならざる」内容は明らかである。それは4党合意にもとづいて提示される解決案を、内容の如何にかかわらず承認する白紙委任状の提出を闘争団員に強要し、それに従わない組合員を除名する決定を行うことである。もちろん、それが大会決定となるか否かは臨大の攻防いかんである。

国鉄闘争共闘会議の結成

 では国労中執が臨大の招集を決定する経過とはどんなものだったのだろうか。
 臨大開催を決定した中執からひと月前の4月16日、東京・大井町のきゅりあんホールで「1047名の不当解雇撤回・国鉄闘争に勝利する共闘会議」の結成集会が開かれた。
 この新しい共闘会議は、今年2月の国労中央委員会(中央委)が、昨年12月の右翼分裂組合・ジェイアール東ユニオン(東ユニオン)の結成と、国労闘争団とその遺族300名ほどが鉄道建設公団(鉄建公団)を相手に雇用関係の確認や慰謝料の支払いを求める訴訟を始めたことを抱き合わせにして、除名などの統制処分を検討する査問委員会(査問委)の設置を強引に決定したこと(本紙124号)に抗して結成された。
 争議の当事者である闘争団員が、自ら被った被害の賠償を求めて自発的に提起した訴訟を統制処分の対象にするのは、労働組合としては自殺行為に等しい。それは「リストラ攻撃の原点=国鉄分割民営化」を自らの闘いとして闘争団と共に担ってきた心ある支援の人々にとって、見過ごせない国労本部の堕落だったからである。
 したがって国鉄闘争共闘会議は、これまでの中央支援共闘会議のように「国労を支援する」非主体的な支援組織ではなく、国労闘争団という争議当事者と共に国鉄闘争を主体的に担う、新しい質の共闘組織をめざす運動体への挑戦でもある。
 ところが国労本部は、この共闘会議結成に報復するかのように、鉄建公団訴訟に参加した北海道と九州のいくつかの闘争団に、月額一人2万5千円の「生活援助資金」を支給しない決定をしたのである。そもそも生活援助資金は、国鉄の分割民営化後もJRに採用された国労組合員が、不当に解雇された仲間の苦境を少しでも援助しようと自発的に拠出したカンパであり、国労本部が支出に責任を負う組合予算とは性格の違う資金であるにもかかわらずである。
 だが、4党合意による解決案提示の前提条件を満たすには、上告審の補助参加人と鉄建公団訴訟原告団の闘争団員に、闘いの放棄を強要する以外にはない。他の大衆組織だったら告発されかねない横領まがいの兵糧攻めは、国労本部にとってはほとんど最後の恫喝手段だった。

自公保3党の声明

 昨年3月、4党合意を承認しながら上告審闘争の継続を決議するなど、国労は矛盾していると非難しつつも、「短兵急に国労を追い込んでも・・・・」と語っていたのは、自民党筆頭副幹事長にして4党協議の座長でもある甘利・元労相だった。
 その甘利にすれば、国労本部のこうした闘争団への締めつけ強化は勝負どころ、つまり国労本部に追い込みをかける好機と見えたのかもしれない。あるいは今年3月に国労本部が、ILO勧告にある「当事者の満足のいく補償」を求めて総行動を展開し、4党合意とは関係のない民主党と共産党に要請をしたことで、「コケにされた」と怒っていたのかもしれない。
 いずれにせよ4月26日、自民・公明・保守の与党3党は、「5月30日まで」という期限つきで、国労が路線的な矛盾を解消しなければ「4党合意から離脱」するという、「JR不採用問題に関する声明」(3党声明)なる最後通牒を国労本部に突きつけた。
 その国労本部の対応は、4月30日と5月8日にエリア委員長・書記長会議を開き、5月14日には全国代表者会議を開いて「声明の真意をつかむ努力をしている」とか「臨大を開くなら大義名分をはっきりさせる」など、無内容な説明に終始するばかりだった。
 それは4党合意の解決案では大半の闘争団が納得しないことを十分に知りながら、しかし他方でそれを推進しなければ東ユニオンにつづく右派不満分子の分裂策動が強まることも明らかな状況に挟撃された高島・寺内執行部が、真摯に組合員の声に耳を傾けることもなく、あるいは確たる決断もなしに、小手先の「矛盾解消の努力」を繰り返してきたツケというほかはない。
 こうして国労本部は3党声明に追い込まれるようにして、臨大の招集に踏み切ることになった。だから27日の臨大は、3党声明の要求を丸呑みする以外にはない。
 しかし国労本部の臨大招集の目的がそうであるなら、この臨大が中止されたとき、2年に及ぶ混乱を引き起こして国労組織を疲弊させ、事実上の分裂状態までつくりだした4党合意の最終的な破産が確認されることにもなるのである。

政権与党による不当労働行為

 ところで3党声明は、政権与党が特定の労働組合に公然と圧力を加え、これに支配介入をする前代未聞の不当労働行為として特筆に値するものである。
 4党合意でさえ、国労本部の要請を受けた社民党が自民党などと協議して確認した政党間の合意であり、これを受け入れるか否かは国労が労働組合として独自に判断するというのが建前だった。ところが昨年1月の国労大会が4党合意を承認して以降は、事あるごとに「矛盾を解消せよ」という圧力が国労本部に加えられ、労働組合自身による争議当事者の切り捨てを強要する支配介入が繰り返えされてきたのである。
 だがまさにこの自民党の、そして社民党の労組出身議員を中心とする旧勢力による国労への支配介入強化の過程は、JRの不当労働行為責任を免罪する4党合意が、国労に全面屈服を強いるものであることを誰の目にも明らかにしたのである。

 4党合意を承認した国労大会後の昨年3月、自民・公明・保守・社民4党による国労本部に対する事情聴取がその転機だった。
 事情聴取の直後に記者会見した自民党の甘利座長は、前述した国労の矛盾をひとくさり非難した後、訴訟取り下げが解決案提示の前提条件であり、解決案は交渉の余地のない最終案で、国労がこれを丸呑みしなければ解決がないことを明け透けに語り(本紙118号)、それまで国労本部が言を左右にしたごまかしが一蹴され、4党合意の正体が暴露されたのである。
 大会での4党合意承認に抗して同年3月に結成された「解雇撤回・JR復帰を闘う国労闘争団」(闘う国労闘争団)の200人以上もの組合員が、取り下げを要求された上告審に、訴訟に利害関係をもつ補助参加人となるための申請をしたのは、こうした自民党と社民党一部勢力による不当な争議への介入に対する当然の対抗処置であった。さらに鉄建公団訴訟は、不当労働行為の存在は認めながら、国鉄改革法を盾に「旧国鉄とJRは別法人だから、JRに法的責任はない」と騙ってはばからない地裁と高裁の不当判決を受けて、ならば旧国鉄の継承法人・国鉄清算事業団を法的に継承している鉄建公団に、改めて不当労働行為による被害を賠償させようという、争議解決にむけた新たな突破口を開こうとする新戦術の提起であった。
 ところが先の3党声明以降、自民党は上告審への補助参加と鉄建公団訴訟は、4党合意当時とは違う新しい事態だからこれを「現状に戻せ」と要求しているという。これほど露骨な支配介入を容認するなら、労働組合は文字通りの意味で御用組合へと転落する以外にはないだろう。しかしすでに一連の圧力を受けて鉄建公団訴訟を理由にした統制処分を表明してしまった国労本部は、卑屈にもこの支配介入に屈し、自らの組合員の争議の権利や訴訟提起の権利を官僚主義的強権をもって制限し、ひたすら自民党に恭順の姿勢を示そうとしているかのようだ。
 だが、上告審への補助参加と鉄建公団訴訟が自民党の主要な標的になっている事実は、この2つの闘いが政府・国交省と自民党にとって最もやっかいな事態であることを、逆に証明してはいないだろうか。しかも4党合意の承認以降も自発的な争議継続を宣言した数百人もの闘争団員全員が、自ら闘いを放棄することもないだろうことは国労本部にとっても、そして政府・自民党にとっても明白なことではあるまいか。
 つまり国労が闘う闘争団を除名しても、訴訟が大衆的闘いとして継続するなら、政府・自民党にとっては何の意味もない。彼らの本音は、国労本部が除名の脅しで鉄建公団訴訟原告団を切り崩し、それを少数の例外的闘いに仕立てあげ、結果として国鉄闘争への社会的関心が薄れることを期待しているだけであろう。だが国労にとっては、自立して闘う組合員の排除は急激な組織的力量の衰退を引き起こし、JR連合に解体的に吸収される末路を決定的にするだろう。
 国労本部はいま自ら目と耳をふさぎ、こうした争議の現状を理解しようともせず、奈落にむかって飛び込もうとしている。

(5月20日)


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