「同一労働同一賃金」の実現に向けて

 

(インターナショナル224号掲載:2016年4月号) 


低賃金の非正規労働者は存在し続ける

 

 安倍政権は「一億総活躍社会」の実現に向けた働き方改革において「同一労働同一賃金」と「生産性向上」の実現を表明している。しかし具体的内容は、正規労働者と非正規労働者は同じ仕事なら賃金などに差がないとする考え方なのか、正規と非正規の格差解消を目指す「均衡待遇」なのかを含めて煮詰まっていない。タイミングとしては参議院選挙に向けて非正規労働を取り込もうとする政策でもあるだろう。

 この間、格差は拡大の一途をたどった。その結果、是正は簡単ではない。厚生労働省は来年度、初めて全産業を対象に正規社員と非正規社員の賃金や待遇格差の実態調査に乗り出す段階である。労働者と労働組合にとっては格差とそれが及ぼしている実態を明らかにしながら、格差解消に向けて声をあげて運動を進めていくチャンスである。

 1月28日、厚生労働省も今後5か年の非正規労働者の「正社員転換・待遇改善プラン」を発表した。プランは今後の議論の素案になると思われるので検討する。

 【目標】

 不本意非正規雇用労働者の割合(全体平均):10%以下(2014年平均:18.1%)(労働力調査)。不本意非正規雇用労働者とは、不本意ながらも非正規雇用労働者として働く者をいう。

 若年層の不本意非正規雇用労働者の割合:現状から半減(2014年平均:(25−34歳)28.4%)(労働力調査)

 派遣社員・契約社員の不本意非正規雇用労働者の割合:それぞれ現状から半減(2014年平均:(派遣社員)41.8%、(契約社員)34.4%)(労働力調査)

 ハローワークによる正社員就職・正社員転換数:450万人(2016−20年度累計)(2014年度:89万人)(職業安定業務統計、キャリアアップ助成金支給実績)

 ハローワークにおける正社員求人数:2,125万人(2016−20年度累計)(2014年度:414万人)(職業安定業務統計)

 

 これらの数字は実態をつかんでいるだろうか。

 現在、労働力調査における非正規雇用労働者が占める割合は約38%。そのうち不本意非正規雇用労働者は本当に18.1%で、残りの20%は「本意」・納得して働いているだろうか。そして5年後も不本意非正規雇用労働者は10%以下で存在し続ける。「転換・待遇改善」に際してはどこかで線引きが行われ、低賃金の非正規労働者は存在し続ける。これまでのような差別・分断が続き、正規労働者の沈め石として利用されかねない。

最低賃金の大幅ベースアップを実現させる闘いはますます不可欠となる。

 ハローワークでの数値は、2014年の数値を5年間ということで5倍しているだけである。これまでのさまざまな雇用助成金は企業(と手続きをする社労士)へのバラマキでしかなかった実態がある。助成金受給が目的で、受給要件の雇用義務期間が過ぎたら間接的退職勧奨を行ったり解雇している企業の事例もたくさんある。バラマキでなかったならもっと雇用は好転していたはずである。

 

 下流の均等待遇

 

「(73年の)オイルショック後に、関東経営者協会が経営者への助言として出した『合理化対策の実務』という文書は、まず、パート・臨時工・季節工など『企業と結びつきの弱い人から逐次整理に入る』こととし、次いで新規採用の停止、欠員不補充などの対策を講じた後、配転、出向・転籍、一時帰休など、在籍従業員の整理調整に手をつけるのがよいと述べている。最後の手段としての人員整理(希望退職・指名解雇)もあげられているが、留意点の説明は希望退職で終わっている。希望退職の募集に際して、『肩たたき』による退職勧奨という指名解雇に近いやり方がしばしばみられたことは事実であるにしても、正規従業員の雇用保障を優先しつつ、指名解雇にいたらないソフトなかたちで雇用調整を進めたいというのが、企業の願望であったことを示すものといってよいであろう。」(兵藤サ著『労働の戦後史』下 東京大学出版会 1997年刊)

 ここに現在に至る非正規労働者の位置づけが見られる。経営者だけでなく正規労働者中心の企業内労働組合からも受け入れられた。

95年、日経連は「新時代の『日本的経営』」を発表した。バブル崩壊後の企業環境の変化に対処していくためには、「変化に柔軟に対応するダイナミックでチャレンジングな創造性豊かな企業経営」を目指していかなければならないと謳っている。「雇用の流動化」に対応するものといわれたが、「必要なときに、必要な人を、できるだけ安い賃金で働かせて、いつでも首が切れる」雇用戦略である。

 具体的には、労働者を@「長期蓄積能力活用型グループ」(総合職正規社員)A「高度専門能力活用型グループ」(一般正規職員)B「雇用柔軟型グループ」(パート、臨時、派遣)に分けた雇用に方向づけをした。しかし@からA、Bに、AからBに移動することがあっても逆流はない一方通行の流動化で、この状況は今も続いている。

 高度経済成長期には、8割を占める「中流階級」の意識をもつ労働者群が支払う税・社会保険料が保護を必要とする人たちの社会保障制度の維持を可能にしてきた。しかし中流階級の労働者の減少が続く中で社会保障の切り下げが続き、保護を必要とする人たちは「自己責任」を強いられてきた。

 また、職場で体調不良に陥る労働者が増大し、傷病手当などの出費が膨らんで赤字運営の健康保険組合が9割を超えるという状況が続いてもまだ労働安全衛生の政策は事後対応に終始している。体調不良者は離職を余儀なくされている。労働者間の格差はますます拡大を続けている。

 このような中で同一労働同一賃金はもう一度「中流階級」(ただし、上流ではなく下流に近い中流階級)層を増加させて税等の納入額を増大させることを狙っているのではないだろうか。そこまで財政は切羽詰ってきている。

 

原資の創出は中高年労働者から

 

 経営者からは人件費をどこからひねり出すかという声も聞こえてくる。

 そのために進められるのが「生産性向上」。これまでも労働者の個別管理・評価で競争を煽り、“勝利”した労働者に多く分配する「成果主義」(「業績給」「役割給」)の賃金制度が進められてきた。原資の創出は年功序列賃金制度や終身雇用制度の解体による中高年労働者の賃金カットである。この間、パイは縮小している。その制度改革に労働組合は介入を放棄することで団結を崩壊させてきた。

使用者は、さらに競走を煽って労働者の“意欲”を引き起こさせて生産性向上をめざす。現在同じく安倍政権から提案されている評価制度・「高度プロフェッショナル制度」や解雇の簡素化・「解雇自由法制」とセットである。

しかし労働者の個別管理・評価で競争を扇動、そして最近の連帯責任は決して生産性を向上させることはできないことは実証ずみである。

 同一労働同一賃金を“積極的に”進めている(なければならない)企業も出現している。

 現在、自動車産業、自動車運送、福祉施設などの業種では深刻な人材不足が発生している。そのためトヨタなどは現在いる非正規労働者を“逃がさないために”転換を進めている。トヨタは今年の春闘で、労組のベア要求3000円に対して回答は1500円だったが、非正規労働者の時給150円アップの要求は満額だった。

 労働者・労働組合にとっては、格差解消をせまって運動を進めるチャンスである。

 しかし新たな問題として、働き方改革の陰で、高齢者雇用安定法が形骸化していることを見逃してはいけない。使用者は雇用調整弁をこれまでの若年非正規労働者を中心とした層から再雇用高齢者に置き換えようとしている。

 高齢者雇用安定法は、本来は定年制廃止または65歳まで定年延長を目指した。それが無理な段階では嘱託などでの雇用延長などが可能となる。しかし定年制廃止は進まず、正規職員から雇用形態を切り替えた雇用延長が多くを占めている。切り替えに際しては、選別が行われ、さらに毎年業績に応じて契約更新が行われる。

60歳間際になっても「会社人間 」としての忠誠が試されて競争が煽られ、再雇用になっても処遇に差が付けられるような会社は、労働者にとっては働きにくいとしか言いようがない。

 リーマンショックの後、企業ではファンドなどの株主の発言力が増した。3月2日の日本経済新聞に、ニッセイ基礎研究所による労働分配率試算が載った。08年から09年は70%超だったが、2015年7〜9月期は60.6%、10〜12月期は61.1%だった。

 この数値は、人件費ではなく委託費などの項目として扱われたりしている派遣労働者の賃金がどうなっているかまでは分からない。それにしても下降が大きい。労働組合は譲歩し過ぎてきた。パイの縮小を了承しながら自分たちだけのベースアップを要求してきた。

 同時に福利厚生費も削減が進んでいる。

 行政改革が叫ばれた時、人びとは歓迎した。例えば、郵政民営化の攻撃に際して真っ先にやり玉に挙がったのが「簡保の宿」。運営方法に対する批判がはじまると世論となった。合わせて福利厚生施設は無駄という世論が作られた。その結果、「簡保の宿」は安価で売却されることになり、かつては簡易保険加入者以外でも低料金で利用することができたのができなくなった。合わせて各企業の福利厚生施設や政策の削減が進められた。世論に迎合した労働者は自ら墓穴を掘る結果になった。

 その一方、内部留保金が増大している。

ギャンブラーの株主は短期間での高い配当だけが目当てで、企業の長期安定や労働者の労働条件には関心がない。

 労働組合は、企業の監視と発言を強めて労働分配率の再検討をせまり、その増額を非正規労働者に回して転換・待遇改善を積極的に推進するよう要求していかなければならない。働きやすさや健康維持のため福利厚生費の増額を要求する必要がある。

 

 同一労働同一賃金の要求は1世紀前から

 

 「同一労働同一賃金」 の要求はどこから生まれたのか。

 イギリスでは、ボーア戦争や第一次世界大戦で男性が出兵して労働力不足になると、それまで家に閉じ込められていた女性たちがさまざまな分野に進出した。そのなかで男性と同じように働けることを「実証」した。戦後は帰還した男性に職場を奪われることになっても、男女同一労働同一賃金を要求し続けた。

 イギリスの社会保障は『揺りかごから墓場まで』と言われてきた。

「1915年といいますから第一次世界大戦のころですが、労働者がどんどん大都会の軍需産業に集まってきました。民間家主は家賃を上げます。払えない者は追い立てました。それに対して、労働組合と借家人組合、それに婦人労働者連盟、女性ががんばるんです。男の中には戦争をしたり、悪いことをする人が多いのですが、女性は、命を守るとか、生活環境を守るとか、福祉を発展させました。」(『記録 阪神・淡路大震災と被差別部落』兵庫部落解放研究所編 解放出版社刊 の中の早川和男論文)

女性は悲惨な戦争を後方で支えながらも自己の人格を発見・獲得していった。

 しかし1978年にサッチャー政権が登場すると社会保障制度は攻撃を受けた。

 

 第一次世界大戦を経た1918年にベルサイユ講和会議で国際連盟の創設が提唱された。そして1919年1月25日、ベルサイユ講和会議は「国際的立場から労働条件を調査し、及び国際連盟と協力しかつその指示の下に右の調査及び考慮を係属すべき常設機構の形式を勧告する」と国際労働法制委員会設置を決議した。このような機関を設置しなければならないほど世界的に労働問題は切迫していたということである。

 委員会は35回の委員会を経て、労働者の代表を交えた労働問題に対応する国際労働機関(ILO)の創設と「国際労働規約」に盛り込む社会正義のための「一般原則」を決定した。その第一は「締結国は現に労働が単なる商品と見なさるべきものに非ずと認めるが故に労働条件を規律する方法及原則にして……」と「労働非商品」を謳っている。さらに団結権の保障、最低賃金制、1日8時間・週48時間、毎週1回の休日、年少労働禁止、男女同一労働同一賃金、移民の自由、労働保護監督制度の9原則を盛り込み、6月28日、ILOが創設された。

しかしILOは、第二次世界大戦を防げなかったことを深刻に受け止めた。そのなかから44年4月、アメリカのフィラデルフィアで開かれた第26回総会では「労働は、商品ではない」と再確認した宣言を採択し、さらに貧困と飢餓、差別が戦争を生むと結論づけ、宣言の第2章で「永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立できるという国際労働機関憲章の宣言の真実性が経験上充分に証明されていると信じて、総会は」「すべての人間は、人種、信条又は性に関わりなく、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追及する権利を持つ」などの確認をおこなった。労働者が獲得する地位は平和の追求と関連している。

日本国憲法の精神はこの世界の労働者が積み上げてきた成果であるILO憲章・宣言にリンクしている。

それから1世紀が過ぎて日本では同一労働同一賃金の議論が開始され、長時間労働が問題になっている。

 

 第二次世界大戦の日本でも労働力不足の状況が生まれ、女性労働者だけでなく強制連行や捕虜、学徒まで動員された。

 しかし戦後は、失業者があふれ、さらに帰還兵の就労保障が必要になった。

「厚生省の報告によれば、戦後から10月上旬まで2か月間に徴用者を含めて413万人(うち女子75万人)の労働者が解雇され、これは復員軍人761万人、海外引揚者150万人を加えると、失業者数は1324万人にのぼると推計された。解雇者のなかでもっとも悲惨なのは、徴用の女子労働者であった。9月20日付の『読売報知』は、『働く女性は何処へ行く』と題し、『戦争終結直後の女子有業者人口は1367万に達し、戦力増強の重要産業たる鉱業・工業・交通産業関係だけでも313万を数えたのであった。……

 目下厚生省では男子復員を円滑に行うため、……学徒や挺身隊以外に役181万人の女子の家庭復帰を目論んでいる模様であるが、果たして簡単にいくのかどうか』」(藤原彰 編『日本民衆の歴史 占領と民衆運動』三省堂 1975年刊)

 女性労働者を家庭に戻すのが政府の政策だった。そして家制度の復活、さらにマイホーム主義が浸透して専業主婦が増えていく。

 鉄道に動員されていた女子労働者などは解雇反対の闘争を組み、その後の国労婦人部の基盤を築いた。しかし多くの職場では排除を余儀なくされ、男性にとって代わられた。

 高度経済成長の時は、女性は補助的労働、雇用の調整弁に動員・利用された。この中で働かなければならなかった女性労働者の賃金は低く抑えられてきた。それでも中小企業の賃金アップ率(定昇+ベースアップ)は民間主要企業を上回ったり、中小企業のアップ率が最低賃金制度に反映されてきた。非正規労働者はその影響を受けてきた。

 しかし80年代に入って春闘の要求が単産ごとになったり、中小企業の賃金アップ率が低下すると、最低賃金決定の審議会においても定昇を含ませるのは適当ではないという声が強まり、ベア率だけが問題にされて低く抑えられてきた。

 

法律を実効性あるものに

 

 現在、法律には「均衡待遇」は謳われている。

 労働契約法第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)として「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。) と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。」

 労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)として 「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

これらを実効性が伴うものにしていかなければならない。

 現在、郵政事業で働く非正規労働者は契約内容がこの法律に違反している雇用差別と主張して各地で裁判を起こしている。

 また、2015年に改正されたパートタイム労働法は、パートタイム労働者と正社員の差別的待遇を禁じている。

 第八条(短時間労働者の待遇の原則)「事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」 という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

 第九条(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)「事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間労働者」 という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。」

 第十条(賃金)「事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第二項及び第十二条において同じ。)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金(通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。)を決定するように努めるものとする。」

 これらを鑑みた時、現在の非正規労働者の置かれている状況が法律違反であることは明らかである。

 しかしパート法は、職務内容や責任の重さに著しい差がないことに加え、転勤や配置転換の有無、異動範囲など、「人材の活用」が同程度である非正規労働者は、正社員と賃金に差を付けない均等待遇を求めているため実効性が狭められている。最初から逃げ道が作られていた。

 経団連は同一労働同一賃金に対して「日本は欧米と労働風土が違う。単に同じ仕事というだけでなく、企業内での人材育成や責任の重さなどを踏まえ、実態に合った検討を」という主張をしている。しかし実際はその程度を超えている。

 一方、欧州の同一労働同一賃金制度は、「客観的な根拠によって正当化されない賃金の差」は認めないことが法文化されている。例えば、欧州連合(EU)のパートタイム労働指令は「パートタイムで労働するというだけの理由では、客観的な根拠によって正当化されない限り、比較可能なフルタイム労働者よりも不利な取り扱いを受けない」と規定している。「客観的な根拠」に関し労使間で認識の食い違いがあれば、最終的には裁判で判断される。

 

同一労働同一賃金は労働条件の基盤

 

 非正規の労働者を雇用しない企業は、技術が継承され高い生産性を維持するためには長期雇用と能力が発揮しやすい職場環境が大切で、そのほうが生産性を向上させることが実証している。要は経営者の度量と手腕である。

 同一労働同一賃金は、賃金格差を縮小し、身分的差別を廃止することだけをいうのではない。性差別を廃止する訴えの中から生まれたように、さまざまな差別を撤廃させる基盤である。労働組合は、常に差別を認めない、差を小さくする要求を基本に据える必要がある。

さらに自分たちの労働のあり方を捉えなおし、働き方・働かせ方を変えさせ、労働の価値を高める闘いための指針である。

そして同一労働同一賃金は、労働者がお互いを認め合い、信頼し合える人間関係を構築し、仲間と一緒に安心して働き続けることができ、能力を十分に発揮・開発できるための基盤となる労働条件である。

 「労働は商品じゃない」

(いしだ・けい)


労働topへ hptopへ