●取り消された郵政の分限処分●
職場の過半数を組織できない正社員組合のつまづき
千葉県・船橋東局集配課の桜沢敏夫さんが、首切りを撤回させた。原職復帰の見事な大勝利。チョー反動人事院による4月17日手渡しの判定は、分限免職処分の取消しとしては、レッドパージ事案以来46年ぶりだ。
超勤命令に従わないからという理由のみでの、メチャクチャな首切りが2年前になされた。年賀状取り扱いの繁忙期、1993年度からの4年間の超勤拒否では減給や停職処分が出された(同じ人事院公平審査では不当判定ばかり)。それにも懲りないでまたもや97年度も超勤をしないのは「国家公務員としての適格性を欠く」として、「分限(=身分)免職処分だ!」と、威張るのが大好きな郵政官僚が怒ったのだった。
だが今回の人事院審査中に、超勤命令の根拠となる三六協定締結自体に、インチキのあることが明らかになった。労働基準法第36によれば、アルバイトやパートさんなども含む全労働者の過半数の代表と三六協定を結ばなければいけないのに、郵政省は勝手に、正規職員の過半数でかまわないとしていた。大日本帝国主義国家の国家官僚は、法律違反を平気でやる。
しかし、三六協定違反が明らかになって、郵政省は大あわて。各郵便局で過半数組合と思っていた全逓や全郵政も大あわて。皆、非常勤労働者の存在を無視したまま、全く意に介していなかった。郵政省は、パートさんの雇用費用を「人件費」でなく「物件」扱いにしている。そして昨年12月はじめ、郵政省は全国2万5千の郵便局に対して、既に締結ずみの12月・1月の三六協定の再締結を指示した。
しかしこれまたひどいやり方で、民主的に全職員の中から代表を選出する手続きなどをせずに、「全逓と全郵政の役員の連名とする方法を基本」としてカッコづけだけをしたのだった。
こうした闘いを経て、今回の人事院での勝条利判定となったのだが、郵政官僚の辞書には「反省」の文字はない。違法と判定された処分の執行者である小林局長は「判定が間違っている」と言い放つ。本来、労基法三六条違反は刑事罰の対象なのだが・・・・。
全逓官僚も、郵政官僚と同じ辞書を使っている。判定がマスコミ報道された翌日、全逓各支部長宛に、全逓千葉地区本部見解が出されたが、「全逓船橋連合支部には一切の責任はありません」とか「桜沢氏を支援した(郵政)ユニオン等の少数組合、団体等が宣伝活動をすると考えられますが」気にしちゃイヤダみたいなことを書いている。もちろん郵政省への批判は、一言もない。
今回の人事院判定は、今や彼女・彼らなしでは業務が立ち行かない役割を担う非常勤労働者の権利問題を、大きくクローズアップさせた。そしてこれは郵政産別を越えて、非常勤労働者の存在ぬきに三六協定を締結している全職場・労組に突きつけられる問題であり、官民を問わずに同様の闘いの拡大が望まれる。また今回の勝利は、時間外労働義務を一定の要件の下で認めた最高裁不当判決(84年の静内郵便局事件、91年日立武蔵工場事件)に一撃をくらわした意味をも持っている。
桜沢さんは、パートナーと大学生の娘さんとの「家族総出西日本行脚」の活動をつづけ、6人の弁護団・現場の仲間と共に勝利を手にした。そして彼の闘いの本来の目的、「労働時間短縮とワークシェアリング、及び、個人の超勤拒否権の回復」をめざし、今後も活動していくと語っている。
(「桜会」会員N)