第三期のテーマ設定について


会員各位

11月27日の《次回研究テーマに関する予備討論》と12月24日のグループ世話人会の討論で、グループの次期研究テーマと当面の日程を下記のように決めましたのお知らせします。

【研究テーマとテキスト】

 *野口悠紀雄著『1940年体制―さらば戦時経済―』(95年3月:東洋経済新報社刊、増補版:2010年12月刊)
 *濱口圭一郎著『日本の雇用と労働法』(2011年9月刊:日経文庫)

 *上記2つのテキストを使って:今後の予定
・第1回:1月18日(土曜)14:00〜 
→『1940年体制』の第1章〜第5章を対象に、戦時総力戦体制と戦後日本の経済システムの連続性を検証・再把握し
       日本的労資関係(慣行)ならびに戦後労働運動の理論に対する歴史的影響などについて検討する。

  ・第2回:2月22日(土曜)14:00〜 
      →『1940年体制』の第6章〜第9章を対象に、戦後日本の高度経済成長における「戦時総力戦体制」として構築され
        たシステムがどのような効果を発揮し、かつまたどのような歪みや障害を作り出したかを検証、次回の戦後労働法制への
        影響を含めて検証する。
        同書第10章と増補版にある第11章については、最終第5回研究会の総括討論のテキストとする。

  ・第3回:3月下旬の土曜日を予定
      →『日本の雇用と労働法』第1章〜第4章を対象に、前2回の「1940年体制」の検討を踏まえて、「日本型雇用システム」
        の実情および問題点等を、戦前と戦後システムを対比しつつ、その歴史的連続性を含めて検証・再把握する。

  ・第4回:4月下旬もしくは5月連休明けを予定
      →『日本の雇用と労働法』第5章〜第6章を対象に、1990年代以降の労働法制の再編とその問題点、また今後の課題
        とうについて、第3回研究会にひきつづき、「戦前と戦後システムを対比しつつ、その歴史的連続性を含めて検証・再把    
        握する。」

  ・第5回:6月に予定
      →『1940年体制』の第10章および増補版の第11章を対象に、4回の研究会の総括討論を行い、次期研究テーマについても、会員各位の意見を聴取したい。

【研究テーマの目的】

昨日は、研究会の目的(何をめざすのか)に関する討論も行いましたが、かなり曖昧なままです。
  とりあえず
  *労働組合(運動)の惨憺たる現状の要因を、戦前にまでさかのぼった歴史的総括を介して解明を試み次代を構想する新しい視点を得ようとするくらいの合意をベースにして研究会を行い、「主体の再生」などグループとして必ずしも共通認識のない問題に関しては、
  今後の討論にゆだねる・・・ってことになりました。

*いわゆる「左翼労働運動」が「絶滅の危惧種」になりつつあるのではないかとの危惧が深まるなか、先のグループ夏季合宿でも、変革主体の再生という問題意識と関連して、改めて日本労働運動の「構造的欠陥」を歴史的にも解明する必要性が提起・討論されたことを受けて、世話人会で前記、野口悠紀雄氏の『1940年体制』と濱口圭一郎著『日本の雇用と労働法』をテキストにした研究会を検討することになりました。




【参考資料】夏期合宿報告
会員各位

以下の【2013年夏季合宿 情勢討論レジメ】は、当日の討論のために配布された佐々木文責のレジメです。

なお、グループ研究活動の次回テーマについて、現在世話人会で議論しています。改めて、戦前戦後を貫く「日本的雇用システム」の解明・総括を通じて、戦後日本労働運動のこれほどまでの主体的崩壊と全面的な停滞の歴史的要因を見出す必要を感じています。

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【2013年夏季合宿 情勢討論レジメ】
2013.9/6–9/7

安倍自民党の参院選圧勝をどうみるか?

▼選挙結果
 *予測どおりの自民党の「圧勝」−民主党の(予測どおりの)惨敗
→ 自民圧勝というよりも「民主の一人負け」=民主党への嫌悪感の持続
 *みんなの党、共産党の躍進−社民党、みどりの風、生活の党の(これも予測どおりの)惨敗
→ 嫌民主票の「みんな」「共産」「維新」への分散と、連立与党を含む旧民主勢力の惨敗
 *維新の会の失速−「存在感の希薄化」と内紛の顕在化
→ 一連の橋下舌禍問題もあって、メッキが剥げてきはじめた・・・・
 *みどりの党、山本太郎など、新たな挑戦の動き
→ 山本選対と旧MPD、秘書人事にみる民主志向、「みどりの党」の今後は?

▼情勢討論の焦点(その1)安保・改憲か経済・外交か

今年3月のグループ年次総会では、年末総選挙によって民主党が大敗を喫し自民党・安倍政権が登場した情勢について、アベノミクスとTPP交渉に焦点をあてた、言い換えれば改憲問題とか日中関係の緊張などが注目を集めているにもかかわらず「経済的問題」に焦点を当てた問題提起が行われ、レジメの最後では『私たちの課題:―「現実的な調整の場ににじり寄る」―』として、『(1)民主党政権の「主体的総括」のために、(2)「格差是正」の政策と「生存権防衛」の社会運動』という二つの課題が、「変革主体の再生」という観点から提起されていた。
 こうした問題提起は、「改憲を強く望む安倍」という最高権力者の明快な政治信条にもかかわらず、現実の日本政治が直面する重要な課題は「安全保障と軍事」ではなく「経済と外交」であるという情勢認識を前提にしたものであった。
 だが参議院選挙での安部自民党圧勝という結果をうけて、社民、共産両党と左翼的諸グループの間では「安倍の暴走の危機」と「改憲の危機」が一段と強く意識されるようになっている。とくに「集団的自衛権」の問題は、内閣法政局長の人事も含めて「事実上の解釈改憲」が強行されるだろうとの認識が有力になっている。
だが、はたして現実はどうだろうか。むしろ安倍政権が直面する「優先順位の高い課題」は、依然としてアベノミクスとTPP交渉に代表される《経済的問題》ではないだろうか。
 これが、第1の問題意識である。
 【注】中東シリア情勢の悪化(もちろん欧米諸国にとっての悪化)に伴って、オバマ政権が国内外の強い懸念や反対を押し切って軍事介入に踏み切ろうとしている状況は、オバマ政権が敬遠してきた「右のハトヤマ=安倍」に、軍事介入支持の表明を期待してさまざまなプレゼントを差し出す可能性を高めている分、注意が必要になってはいるが・・・。



▼情勢討論の焦点(その2)現実的課題と政治の乖離(政治的ミスマッチの基盤)

 もうひとつの問題意識は、現実社会が直面する課題とくに人々が生活を営む際に必要と感じる政策的諸課題と、政府や国会における政策論争や法案審議が乖離しつづけ、人々が必要とする政治の劣化が進行しつづけている日本政治の現実である。
 いわば「政治的な需要と供給」がミスマッチに陥った日本政治の現状は ――人々の実感に沿って言えば―― 小泉改革を契機にして、つまり「痛みに耐えて」実行された構造改革によって輸出企業を中心にした戦後2番目の長期好況が達成された一方で、非正規雇用の急速な拡大がワーキングプアを社会問題として急浮上させた時期以降に常態化したと言える。
マクロ経済指標での好景気が庶民には何の恩恵ももたらさないどころか、逆に社会的経済的格差の拡大とともに中間層の没落が促進された現実は、「政治が庶民の期待や要求と乖離し」、他方では「グローバリゼーション」の名の下に「株主と投資家」の期待と要求とが何よりも優先される「政治のミスマッチ」の横行の始まりだったのである。
と同時に進行したのは、「地域ボス」や「業界団体」と癒着した「族議員」が、自民党の合意形成機構である政務調査会や税務調査会を活用して政府の政策決定過程に介入し、多様な利害関係を調整して政策をボトムアップする、保守一党支配には不可欠であった「包括政党」と称する「広範な合意形成システム」の衰退であった。
02年の郵政解散・総選挙で、「郵政改革」に反対した議員に対立候補までぶつけて「党の政策的一致」を貫徹しようとした小泉の決断は、「包括政党」なるヌエ的とも評された自民党の政策的ボトムアップ機能を衰退させる歴史的契機となったのである。
だが、「人々の実感」では小泉改革がもたらしたとされる日本政治の劣化は、実は1990年代半ばから始まっていた。というのは、「メインバンク方式」と呼ばれた日本的な間接金融システムが「グローバリゼーション」と「規制緩和」の名の下に激しい批判にさらされ、従業員や出入り業者を含む「社会的存在」としての企業が「株主の所有物」であるとするイデオロギー的攻勢とともに展開された「金融ビックバン」こそが、政治と現実の社会問題の乖離を生む最大の契機となったと言えるからである。
 実際に1995年を境に、日本金融市場における外国人投資家(株主)の比率が急激に増加し、山一證券や北海道拓殖銀行などの倒産が公的資金投入による不良債権処理と銀行救済を促したが、この過程を通じてメインバンクシステム=日本的間接金融は急速に力を失い、日本経済の「金融化」が急速に進展した。
 こうして、日本株式会社と呼ばれた独特な資本主義(もちろん欧米諸国からみて「独特な」)は、「グローバルスタンダード」と称するアメリカ的な金融システムへと強引に再編され、だからまた「日本独特の資本主義」に対応していた「日本独特の上部構造」=包括政党・自民党(あるいは55年体制)は、その合意形成能力を急速に失うことになった。つまり現在の「社会的課題と政治の乖離」を引き起こす社会的な基盤は、実に90年代の半ばから形成されてきたのである。
 そして20年の長きに亘って試みられた末に惨憺たる事態に陥って破綻した「政治改革」も、実はこの「会的課題と政治の乖離」に対応する政治システムの再編・再構築の試みであったし、労働者と「中間階級」の要求を政治的主張へと翻訳してきた政党・社会党の解体も、こうした政治システム再編の一環だったのである。
 だが選挙制度を小選挙区制に変更し、政治献金に隠れた賄賂を無くすと称して導入された政党助成金等々の「改革」は、国家の戦略的展望や政策的分岐を曖昧にして「政権交代可能な二大政党制」なる「非政治的な大義」しか提示出来なかったが故に、旧構造を衰退・解体することはできても新たな合意形成システムの構築を促進することは、当然ながらできなかったのだ。
 かくして政治改革に伴う政治再編・政党再編は迷走をつづけ、一向に政策的収斂が進まないまま党利党略・個利個略の横行を許し、結果として「反自民」と「政権交代」に矮小化された民主党政権の誕生とその失敗を経て人々の政治不信を助長し、「社会的課題と政治の乖離」がさらに拡大して長期化することになったのだ。

▼情勢討論の焦点(その3)「変革主体の再生」と政党再編

 この「社会的課題と政治の乖離」は、結局のところ「庶民を代弁する政治主体」の再生という問題を提起するのであり、それは衰退のつづく戦後革新勢力に代わる「社会変革の主体」を如何に構想するのかという問題と重なる。
 「戦後革新勢力に代わる・・・変革主体」という問題意識は、私たちが第四インターナショナル日本支部に参画したときと同じ問題意識でもあるのだが、決定的な違いはその「変革主体」の質あるいは想定・条件である。言い換えれば、「ロシア革命モデル」に基礎づけられた変革主体=ヴォルシェビズムで武装された革命的プロレタリアートという「実在しないことが証明された主体」ではなく、第二次大戦後の資本主義=アメリカ型資本主義が達成した基本的人権思想や代議制民主主義制度を実際に体験し、かつ現代資本主義が生み出す格差や不平等を批判的に超克する以外に人間としての全的解放を達成しえないような、それでいて社会的生産労働への従事によってしか生活を営むことのできない人々という条件を満たす「社会的勢力」を見出し(あるいは類型化して普遍化し)、そうした人々が自らを「ひとつの政治勢力」として形成するような思想と展望をどう練り上げるのかが、今日の私たちの課題なのである。
 その意味で、戦後政治体制の動揺と政治改革が現実となって以降つねに話題になる政党再編に対する私たちの興味は、単に戦後日本の保守政治に対するカウンターパワーの結集だとか、グローバリゼーションの時代に対応できる政治勢力の形成といったことに留まることができなかったのも当然である。私たちの政党再編に対する興味はある意味で常に、新たに生まれる「新勢力」が内包するであろう現代資本主義の超克を目指そうとするラディカルな可能性であったし、同時にそのラディカル性が「現実の社会的課題」と乖離しないリアリティーを持つか否かにあったと言ことはできるだろう。


▼第二次安倍政権の特徴と党内抗争
 *「無自覚的な非米」から「自覚的な反共・非米」へ
→内閣官房参与・谷内正太郎(やち・しょうたろう:元外務相事務次官)が率いる「チーム・谷内」のイニシアチブ=北朝鮮問題、対中強硬姿勢、シリア問題
 *小泉改革を継承する新自由主義的経済政策の採用
 アベノミクス、成長戦略と規制緩和


▼「変革主体の再生」は、どこから始まるか?

*政党再編の焦点としての自民党内抗争
→分散化した野党の無力な分だけ、政策的対決は与党内部の抗争へと収斂される可能性
→新自由主義的経済政策は、与党を二分する政策論争をはらむ、

*政策的収斂の焦点=国家主義・民族主義、リベラリズム


 


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