対論サークル21レジュメ

 

総論 「アメリカ型資本主義の衰退と混沌の中の多極世界」 

 

寺岡衛2011.3.26


 

(一)東日本大震災がもたらすもの

 

1)脱成長経済と共生・連帯への歴史的転換

×石炭と戦後復興――その転換としての石炭から石油へ

60年安保・三池闘争からニューレフト運動)

×石油と高度経済成長――その転換としての石油ショック

(減量経営から科学技術・効率化、労使協調と中流社会へ)

×原発と新経済成長戦略――その転換としての東日本大震災、原発危機

(脱成長経済と共生・連帯社会へ)

 

(2)外的強制(自然災害)による共生・連帯社会

×連帯主体の脆弱さと時代(歴史)の強制

×生活思想の流動、転換――自己中心的自立化(非正規労働=無縁社会=孤族社会などとして顕在化→戦後第2の市民社会)から相互連帯社会の主体(第3の市民社会)へ→自然発生的過程として

×小数者拠点(連帯ヘゲモニー)の建設――思想的発信力と運動拠点(社会的事業、非営利的企業、協同組合、労働組合、農業組合、NPO、ボランティア等々)の組織化

×理論上の論点として、日本では不鮮明だがアメリカではリバタリアン(新自由主義)かコミュニタリアン(共同体主義)か

×日本――後期資本主義の危機の先端にある?

 

(二)後期資本主義の衰退の中に21世紀の論点を見極める

 

(1)経済のグローバリズム(国際的無政府性)から国家・社会の共同化(世界連邦国家)へ      

(イ)先進国における実物経済の衰退と新興諸国の実物経済(大衆消費を含む)の台頭――その連携形態(G7−G20)

(ロ)新興諸国の実物経済の発展を先進国の金融・資本投資システムによって支配(相互競争)――保護主義の危険――新興諸国が公平化を求めて抵抗――二重・三重の政治的衝突の危機

(ハ)先進国、新興国のグローバル化による平準化(カネ、モノ、ヒト)には両者を貫く格差拡大が貫徹――先進国内においても植民地型社会の実現――先進国における国家、社会の再編、衝突、変動の不可避

(ニ)経済のグローバル化、国家間の共同(衝突)の過程は、それへの合流の条件獲得のために新興国・後進国の民主化―市民革命の不可避。80年代〜90年代アジア、90年代〜01年代ラテン・アメリカ、そして今日中東、アフリカ

(ホ)21世紀の第1の中心問題は世界の多元性を世界的連邦化に統合する問題であろう。

 

(2)世界連邦化に内在する多元性の結合――その歴史と課題

()前期資本主義から後期資本主義の過程における多元的統合をめぐる攻防

×19世紀後半〜20世紀前半の中心問題は産業革命を背景とした経済のグローバル化と国民国家の民族主義的細分化――そのもとでの植民地垂直支配――相互の利害をめぐる国家間の排他的衝突――第1次、第2次大戦とファシズムという破滅的危機を生み出したヨーロッパ(前期資本主義)にあった。

×ヨーロッパのこうした国家単独体(多元的衝突)の破滅を国家連合体(多元的統合)の側から救済・再組織(一方においてアメリカ合衆国、他方でソビエト連邦)しようとした闘いであった。

()独裁的統合か民主主義的統合か(冷戦期の攻防)

×ソ連邦の国家連合体(2次大戦後は中国、ユーゴも同様)は、社会主義の権威による共産党独裁でそれを支えた――共産党独裁による国家連合体(多元的統合)は結局破綻、ないし危機に直面している(中国)

×問題はアメリカ合衆国のみがなぜ、多元的統合を民主主義的方法によって可能としたのか――そして戦後先進国(西欧、日本)において覇権を形成し得たのか

×すなわち、アメリカの多元的統合(自治と集権)を民主主義的手法で可能とした歴史的かつ社会経済的基盤はどこにあったのか。それを総括することが後期資本主義の今日の危機の根拠を明らかにすることになる。

×それはアメリカにおける南北戦争からルーズベルト(29年恐慌から第2次大戦)〜ケネディ(公民権運動)をピークとしたニューディール連合の基盤を明らかにすることであり、それがオバマ新ニューディールの基盤たり得ないことの根拠を明らかにすることでもある。

 

(3)オバマの新ニューディール連合とルーズベルトのニューディール連合の決定的差異

(イ)後期資本主義の上昇期(ニューディール連合)と衰退期(新ニューディール連合)が基本的前提

(ロ)宇野重規氏の論文(『世界』2月号)でオバマ連合解体を語る

×「ニューディール連合は、労働者、南部白人、イタリア系、ユダヤ系、白人マイノリティ、カトリック、黒人などの様々な集団を、社会的弱者の福祉と権利でまとめあげた。それは当時(1930年代)におけるマイノリティ大連合であった。オバマの当選もまたマイノリティにおける新たなリベラル大連合の再来に見えた。だがオバマ連合は見る影もなく消え失せてしまった」「オバマの〈バランス感覚〉は今や彼を誰も積極的に支持することのない極めて危うい政治的空白地帯の上に押し上げてしまったかに見える」「その優れた知性とバランス感覚が発揮される政治的環境はほとんど失われつつある」のだと。

×問題はなぜ「オバマ連合は見る影もなく消えうせた」のか、その歴史的で社会的な基盤をどうとらえるべきか。

 

(4)産業と社会(文化)の複合的生産・蓄積様式――その好循環と寡占的ヘゲモニー

(イ)その生産・蓄積様式の好循環関係

×第1に科学的生産システム(産業と学術・技術の複合体)

×第2に生産性向上に対応した賃金と労使一体の企業内体制(労使協調体)

×第3に産業と生活基盤・消費文化の複合関係(中産階級社会)

×第4に産業経済と金融経済の相互の生産・蓄積関係(金融寡占体制)

×第5に産業と軍事の結合(産軍複合体)

(ロ)以上の経済(産業)と社会(文化)の複合的生産・蓄積様式とその好循環関係の上に資本の独占・寡占体制が社会(生活)を包摂するヘゲモニーとなる

(ハ)この上に中産階級社会を構成する多元的基盤の民主主義的統合を成立させた――(州政府の自治と連邦政府の集権の調整機能)

(ニ)他方、それが戦後におけるアメリカ(後期資本主義)世界覇権の力と能力の背景

(ホ)ルーズベルトのニューディール連合は、以上の社会・経済構造の好循環と寡占ヘゲモニーの政治的表現であった

 

(5)20世紀前半――階級社会か中流社会かをめぐる攻防〈革新時代〉

(イ)歴史的には西部開拓時代の国内における外延的拡張期の終焉――内包的蓄積に向かう工業化、都市化が自由放任経済を基盤に進展――一定の有効性と矛盾の隠ぺい

(ロ)だが工業化と都市化(北部を軸に)に対応した大量の移民労働者が流入――北部共和党主導の工業化と自由放任経済が移民労働者に対して強収奪と高蓄積を強行――新たな矛盾(階級対立)の顕在化が急進展

(ハ)新移民労働者を軸にした労働運動と左翼的政治運動が発展――その中心としてアメリカ社会党(2インター)

〈社会党の大統領選挙得票数〉

1912年 901,551票 1912年頃は党員数12万人

1916年 590,524票 2人の連邦議会議員

1920年 913,693票 50人以上の都市の市長と300人以上の地方議員

1932年 884,885票 全米で1200人以上の公職者を選出するに至る

 

(ニ)アメリカ社会を階級社会として評価したのは労働組合や社会党(後に共産党)だけではなく、リベラル左派の流れもそうだった。彼らは資本の発展に依存する「豊かさ」こそ「民主主義」の基盤と主張するニューディールの中道的性格を批判、人民主権こそ「民主主義」の主体と主張

(ホ)20世紀前半、〈マルクス主義派〉はもちろん〈リベラル左派〉も「組織労働者」の枠に包摂できない中産階級市民を主体とする中産階級社会の登場を分析できなかった

(へ)だが29年恐慌から第2次大戦に至る「経済」と「社会」の複合的生産・蓄積様式、さらに産軍複合と寡占的ヘゲモニーが、ドイツ・ナチズムと日本帝国主義に対抗して民主主義擁護者として登場したとき、リベラル左派を含む階級社会派は急速に衰退

(ト)さらに戦争勝利と戦後の経済の発展の中で「豊かさこそ民主主義の基盤」とするニューディール連合の一員へと「リベラル左派」は吸収されていった。市場の効率性と賃金上昇の好循環が大量生産−大量消費を拡大再生産し――労働者の多数を民主党の基盤にしただけではなく、知的人材としてのリベラル左派を産学複合体の中に編入していった。

×〈社会党〉戦後消滅

×〈共産党〉実体なし

×〈第4インター〉労働者党提唱の破綻とごく少数派の存在

 

(6)ニューディール連合(ルーズベルトからケネディまで)のヘゲモニー

 ――機会の平等と人間・社会・自然の全面的商品化――

(イ)29年恐慌の克服、第2次世界大戦を通じた世界覇権、黒人反差別と公民権運動

(ロ)産業と社会の複合的生産・蓄積様式―資本の寡占的ヘゲモニーのもとで展開される大量生産−大量消費=「豊かさの中の民主主義」は同時にあらゆる社会・人間・その生活基盤を商品化(市場化)し、その価値基準を社会のあらゆる領域に貫徹することとなった。――商品化は労働力商品として人間の労働過程に限らず、消費生活・文化の全過程を通じて全面的に貫徹されていく。

(ハ)そのことは、商品的価値観を通じて資本と生活者を運命共同体へと結びつけ、人間的価値基準を喪失させて商品価値のもとに人間を包摂していく。

(ニ)アメリカ型「豊かさ」と「民主主義」は同時に「人間的価値観の喪失」「商品価値への人間包摂」と裏腹の関係にある。

 

(7)複合的生産様式―寡占的ヘゲモニー

 ――その好循環関係から悪循環関係へ――

(イ)資本の寡占的ヘゲモニー(上からの社会結合)の崩壊

×グローバル企業として世界進出・投資――実物経済の空洞化――地域社会の衰退と崩壊

×ITバブル、住宅バブルの破綻からリーマン・ショックへ――世界のバブル経済(日本、南米、アジアなど)に依拠したアメリカ経済が自ら本体のバブルに直面

×リーマン・ショック――金融大資本や大企業(自動車ビッグ3など)の破産・国家財政の危機――州政府の財政破綻や教育、医療などの崩壊

(ロ)複合的生産様式の好循環から悪循環への転換――社会の多元化の分解・衝突

×科学的生産システム(産学共同)が生み出した効率化、生産性、競争力が今日、逆に人間労働の機械への従属、人間(労働)の価値の引き下げ――大量失業、職の不安定、低賃金を強制

×もともと産学協同=科学的生産システムは、19世紀後半―20世紀前半にかけたアメリカの圧倒的労働力不足(移民労働者を吸収した)を補完する手段として考案。組織(テーラーシステム等)――人間労働の不足を前提とした効率化は、機械の生産性の成果を人間(労働)の豊かさに還元しえた

×フォード(労使一体)かあらGM(中産階級社会)化へ 生産−消費−文化−社会へとつながる

×ニューディール連合のテーゼ「豊かさの中の民主主義」(多元的統合力)が成立した根拠

×だがこの好循環関係が悪循環関係へと転落したのは、科学的生産システムによる効率化や生産性が人間労働の価値を引き下げ、生産過程からの排除を強めることになるからである。

×この構造は、人間労働の没落(犠牲)によってのみ、資本蓄積を可能とする。たとえ経済成長があり得ても、それは技術革新−競争力にのみ投資されるのであって、人間労働の側には還元されない。

×こうした商品経済による人間(労働)の包摂(価値低落)は、大衆消費の慢性的停滞と投機の大衆化(不労所得化)を生み、その副産物として無計画・衝動的な過剰消費(消費中毒者)を大量に生み、社会の不安定化と危機を強める。

×その上で進行する資本の新興諸国への流出――産学の空洞化と消費・生活文化の没落、地域社会の荒廃

×格差社会の拡大と中産階級の没落、分解――社会の多元性とその構造の分解・衝突

 

(8)ニューディール連合とオバマ連合―似て非なるもの

(イ)オバマ連合=資本の寡占的ヘゲモニーの再生を求めるもの。

×先にみた宇野論が述べるように「オバマ連合は見る影もなく消えうせ」「危うい政治的空白地帯の上に押し上げられ」「発揮すべき政治的環境は失われた」のは、まさにオバマ連合の構想が歴史的分解過程に入ったニューディール連合の基盤=複合的生産様式とその寡占的ヘゲモニー再生以上のものではないからである。

×オバマの「多元的統一論」がリーマンショックによって社会的ヘゲモニーを失った大金融資本や自動車ビッグ3を支え、分解過程に入った社会を中道主義的に接木しようにしか見えない。彼のチェンジは何を意味するのか、見えてこないのである――共和党・大資本との妥協の再生産しか見えない。(続く ・以下手書きのレジュメ)

 

(三)21世紀への構想と論点

 

(1)後期資本主義の成立基盤とその変遷・分解の特徴<まとめ>

×産業と社会(文化)の複合的生産・蓄積様式の好循環関係から−産業の空洞化(バブル化)と社会の崩壊の相互悪循環関係への転換。はまり込む。

×その上に成立していた資本の独占・寡占的ヘゲモニー−リーマンショックによる金融・自動車等第独占への大衆的不信=ヘゲモニーの喪失。
社会からの反発は左(虚脱的)からよりも、右(ティーパーティや宗教右派)からの反連邦・反中央・反大企業・反エリートとして。

×豊かさの基盤とした民主主義は−格差社会の深刻化と中産階級社会の分解−大衆の株式投資経済への依存(サブ・プライム・ローンなど)−民主主義の空洞化と管理社会の出現。

×大量生産・消費社会(豊かなる社会への幻想)は、他方、人間・自然への市場・商品経済による価値観の包摂を全面化−人間的価値基準の崩壊と疎外社会の深刻化。

×ニューディール連合のかつての推進力・統合力−それを継承(再生)しようとすることによって分解する寡占的ヘゲモニーに依拠するオバマ連合=その多元的統一論の空洞化・分解。

 

(2)複合的経済システムの悪循環と国際的覇権力の後退

−グローバルな経済利害の衝突と世界的無政府性の危機−

×アメリカの国際的な覇権力は、先に述べた複合的経済システム−その優位性と世界的牽引力、ドルの基軸通貨と一極集中、その上に産軍複合体を土台に置く世界的軍事統制力(世界的警察権)を成立。

×複合的経済システムの悪循環への転換は、アメリカの世界的覇権を衰退(経済の一極集中においても、軍事的警察権においても)−世界的多極化を不可避とする。

×経済のグローバル化と政治の多極的分解は、世界における無政府的混乱=衝突の危機を生み出す。すなわちグローバルな経済=政治の衝突に対して、誰も統制する力を発揮し得ないから。

×問題は、グローバル経済下における衝突を、政治的に統制=調整する世界連邦国家をどうするか(戦略目標)が問われる−だが今日、それにむけた過渡期の体制として、国家間の政治的調整をはかる世界装置<旧来の覇権国に代わる世界共同機構>をどうするか。

×WTO,IMF,APEC,TPPなど経済調整に限定されている。ヨーロッパですらEUは、経済統合の枠組みを越えられず、政治(国家)的統合の欠如が今日的困難を生み、各国ごとの政治危機を誘発している。

×今日的意味で世界的な政治機構として機能しうるのは、国連であろう−その民主的再編・強化を通じてはじめるべき−社会事業組織、労働組合、協同組合、非営利企業、人権団体、NGO、NPO、種々のボランティア等々の世界的大衆運動組織が、国連へ参集、包囲、統制していく運動から始めるべきだろう。

×21世紀における第一の課題(論点)は、「世界連邦国家」を目ざす戦略問題であろう。

 

(3)独占・寡占ヘゲモニーに代わる社会=共同体(アソシエーション)的ヘゲモニーへ

×経済(商品的価値基準)による社会(人間的価値基準)の包摂を打破。

×この運動は、市場や商品を否定することではなく、そこに埋め込まれた資本の収奪・略奪の論理を排除(空洞化)し等価交換のための機能(手段)に市場・商品を奪還すること。

×自己中的市民(商品価値に包摂)から共同=連帯的市民(人間的価値の奪還)へ。言い換えれば、資本主義的市民社会から社会=共同体的市民社会へ。その革命と運動。

×社会=共同体的市民社会への運動は、上部構造先行型革命(社会や意識の構造変革を先行する革命運動)を通じて下部構造(政治経済)の変革をめざし−そのための多数派と連合を獲得していく。

×<政治権力−経済的土台の変革−その反映としての意識(文化)革命>とする俗流唯物論とは逆転の方法。

×意識(文化)は、経済・政治的土台の受動的反映論ではない。逆に先行する意識革命が、経済的土台に介入=変革主導することもあるし、上部構造(意識)と土台(経済的基盤)が対立しながら機能することもある。−マルクスの唯物論は唯物史観として成立するのであって、一時代を歴史的に把握すべき。

×経済(商品的価値観)が社会文化を全的に包摂−だが逆にその反作用として意識の自立が市民社会の流動化=市民意識の反資本主義化を急展開させている。

×「ハーバード白熱教室」(マイケル・J・サンデル)−リバタリアニズム対コミュタリアニズムの論争。

 

(4)社会−市民運動の拠点−少数者のシングルイッシューとその普遍性

×再度のマトメ−後期資本主義衰退と没落の根拠=「産業と社会の複合的生産・蓄積様式の悪循環への転化」「独占・寡占的ヘゲモニーの崩壊」「豊かさを基盤とした民主主義の空洞化と管理社会への変質」更に付け加えて、「世界的覇権の後退と多極的分解」と「ニューディール連合の分解と幻想の崩壊」

×後期資本主義の衰退と没落は、全面的であるが、最後にその衰退がもたらす運動論的特長を見てみよう。

 その特徴は、市民社会の資本主義的基盤からの離脱の顕在化であり、市民運動の新たな段階への飛躍である。

×近代市民社会(革命)は、資本主義経済の発展に対応してそれを支える社会=意識を成立させてきた。もちろん後期資本主義も、その市民社会を社会的・文化的基盤として包摂してきた。

×だが、後期資本主義の衰退・没落は、人間、自然、貨幣の商品化(商品化の破滅的極限)を通じて、資本と物欲の無限の肥大化をもたらし、人間、自然、社会の究極的破壊の危機を顕在化している。

×若き資本主義の発展を通じて動員された市民的自由、平等、生存権や人権など自然権が、没落資本主義の破局的危機の顕在化と衝突を開始。市民社会の資本主義からの離脱−新しい市民運動が開始される。−これが<共同体><連帯><共生><助け合い><コミュニティ>や<善><正義>等のスローガンとなって発信されている。

×こうして発展する市民社会の資本主義からの離反は、共同組合、ユニオン型労組、非営利的企業活動、地域おこし運動、NGO・NPO等多くのコミュニティ運動として発展。

×これら市民運動は、意識運動−経済社会的土台の変革へと介入する時、物象化された一般社会に包囲されて必然的に少数者の拠点運動として進む。

×だが、少数者の拠点的発信と運動は、時代的趨勢と結びつく時、普遍的性格をもつ。

×権力の末端組織(自治体)への侵食−少数者運動がら大衆的広がり。


【補足提起】「(一)東日本大震災がもたらすもの」について

 

×東北だから大衆的自治が生まれた(←農村共同体の伝統)。これと

×東電−政府の無計画性(説明性の欠如。自分がわかっていない)との明確な対比が何を意味するか。

×この一方での左翼の無為。

×市民社会派の動向に注目すべき。

×現在の情況は、外的要因によって転換を強制されているのだが、変革主体の準備が間に合っていないために、思想的・経済的・政治的混乱が生まれているととらえるべきである。

 

【討論】(東日本大震災の救援・復興運動の現状認識やありかたに論議の中心が移ったため、寺岡提起そのものについては、あまり議論にならず)

×「21世紀への構想と論点」の部分は、今回の第一期の学習会の結論の部分を先取りしたものではないか。

×国連への様々な大衆運動が合流する動きはすでに始まっている。かつて「もう一つの世界」を求める運動が、サミットなど既成の組織に対立的に組織され、それらの開催を阻止する実力行動を組織した時代とは、すでに時代が変わっている。「もう一つの世界」を求める運動体や個人が、国連の自国の代表や他国の代表を自らの展望に獲得しようとする動きは顕在化している。

×かつて国連でのロビー活動が必要という提起にビックリしたものだが、たしかに時代はその方向に進んでいる。

×東日本大震災の救援活動の場面でも、政府が動けない中で、自治体同士や様々な大衆組織が自立して自治体と連携して救援にあたる場面が多々見られている。

×これほど広域での深刻な災害場面では、政府が個々の細かい場面に対応することは無理であり、自治体やNGO・NPOが自立的に連携して動くのは、むしろ当然といえる。

×東北だからこそ大衆的自治が生まれたという見方はどうか。たしかに農村共同体の緊密な連携の伝統のあった地域では、自主的な避難・救援・復興活動が行われている。しかしこれは阪神淡路大震災の時でも、大都市神戸ですでに見られたこと。大都市であっても、その内部に自治的経験が継承されている場所がある。そうしたところがこうした自然災害に際して大衆自治を行うのはむしろ自然な話し。都市にも自治の伝統はある。

×都市の自治は弱体だ。それは70年代の革新自治体の運動が解体されたことに見事に現れている。革新自治体の成立の背景は、新興住宅地の出現であった。しかしそれは自立した個人として地域を組織したものではなく、膨大な農村的共同体の中に斑状に存在し、それは飲み込まれ「革新」支持から「保守」支持へと転化した。

×たしかに70年代の革新自治体を支えた新たな都市共同体は極めて脆弱であった。それは生活を地域を組織したものではなかった。寺岡の都市共同体認識は、70年代革新自治体運動の東京多摩地区での敗北の経験に規定されすぎている。その後新興住宅も建設されて半世紀が過ぎ、住民の高齢化や孤立化が進むなかで、逆にこの地域共同体があまりに脆弱であることが顕在化し、それを再組織することが問われ始め、それを克服しようとする実践もある。孤独死などが問題視されたこと自体の中に、地域共同体の価値の再発見があるのであり、ここから新たな都市における共同体運動が始まっているとみるべき。


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