地球的課題の実験村第2回シンポジウム
空港を包囲する、明日を築く壮大な計画


実験村と暫定滑走路

 3月25日、東京の日本青年館で「地球的課題の実験村」(以下:実験村)のシンポジュウムが開催された。
 戦後日本の代表的な巨大開発事業であると同時に、その矛盾と破綻を象徴する国家プロジェクトでもある新東京国際空港(成田空港)建設をめぐる反対闘争の中からうまれた実験村が、東京でシンポジュウムを開催するのは昨年3月につづいて2回目になるが、今年のシンポジウムでも「北総台地夕立計画」「地域自立のエネルギー」「農と百姓のネットワーク」という3つのプロジェクトを中心に、この1年間の活動報告をうけて、今後の課題や計画について4つの分科会で活発な論議がおこなわれた。
 昨年末から、実験村のメインステージである成田市三里塚では、実験村がかかげた理念(共生や循環する生態系の再生など)を事実上否定するばかりか、地元住民への騒音被害などの影響もまったく無視して暫定滑走路建設が強引にはじまったが、「20世紀の開発の思想を越えて」をテーマにした今回のシンポジュウムは、不況対策を名目にしたこうした近視眼的な公共土木事業が、結局は地域経済振興にとっても一時的なカンフル剤にすぎず、むしろ地域社会の再生にむけた長期的な構想や実践こそが求められていることを、具体的な世界各地の経験や実践を明らかにすることでしめすものだった。

滑走路共用阻止にむけて

 北総台地夕立計画プロジェクトは、空港建設で失われた里山の森を再生し、首都圏有数の畑作地帯である北総台地に雨と地下水の循環を取り戻そうという壮大な計画であり、森林の成長を考えれば、それは100年にもおよぶ活動の積み重ねである。地域自立のエネルギープロジェクトも、すでに世界や国内の各地に自然エネルギーを利用する先進的な事例をみても、短くとも数10年を要する企画である。そしてこうした長期的な構想を支えながら、新たな経験や成果を分かち合う各地の運動との連携を生もうというのが、農と百姓のネットワークづくりというプロジェクトと言うことができるだろう。
 他方でいま建設中の、本当に使用できるかすら不透明な暫定滑走路は、羽田空港の国際空港化や首都圏第3空港構想の圧力におされた運輸省が、利権政治と航空行政の現実的要請の矛盾から逃げ出すために、「成田空港建設計画の完了」を宣言しようとして強行した、その意味では運輸行政の歴史的失策を認めたくないためだけに強行されたと言って過言ではない。それは事実上運輸省が、現在の成田空港の欠陥の解消が不可能であることを認め、にもかかわらず膨大な資源をまったく無駄に浪費する、まさに彼らの「エコ・エアポート構想」の本質的欠陥を自己暴露する工事というほかはない。
 実験村の長期におよぶことになる壮大な計画は、空港建設反対闘争を闘ってきた人々には悠長すぎると思われるかもしれないが、二期工事の強行によって新たに焦点化することになった暫定滑走路をめぐる攻防は、結局はその共用の開始を阻止することに向けて、空港を包囲する広範な戦線をいかに準備するかにかかっていると言える。
 そして実験村の地道だが堅実な前進と、その協働のなかでうみだされるさまざまな連帯が、地域と全国そして世界を貫いた社会的共感を獲得していく度合いに応じて、そうした空港を包囲する大衆的な戦線をつくだすことになるにちがいない。


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