つどいはじめた実践的対案
第3回 地球的課題の実験村シンポジウム


 5月26日、東京の杉並区立勤労福祉会館で、第3回地球的課題の実験村シンポジウムが、170名余りの人々を集めて開催された。
 今年のシンポジウムのテーマは「日の出、水俣、三里塚からわたしの暮らしへ」と題して、「私たちの豊かで便利な暮らしの裏には、水・大気・土を汚染するゴミや科学物質の蓄積、地域の破壊があります。21世紀、生命の循環を大切にする暮らしと世の中づくりに向けて、各地の取り組みを共に学びましょう」(同シンポ宣伝チラシより)との呼びかけで行われた。
 第1部では、東京の水源である多摩川上流域に建設される廃棄物処分場に反対をつづける「日の出の森・水・命の会」、公害の原点といわれる水俣病の本質を訴えつづけている「本願の会」、そして公共事業の名において強行された空港建設と20年以上にもおよぶ反対闘争の中から、巨大開発事業への「対案」として地球的課題の実験村への挑戦をはじめた三里塚から、それぞれ「豊かな社会」の陰にあるゴミ問題、公害の加害と被害、農的価値などが報告され、第2部では、1部の報告にもとづいて花崎皋平さんの問題提起があり、つづいてテーマと共通する各地の実践(それはもちろんまだ社会的な多数派とは言えないが)が、リレートークのかたちで7人のスピーカーから話された。

 昨今「自然にやさしい」や「エコ〇〇」といったキャッチフレーズは、ちまたに氾濫している。有力な近郊農業を大規模に破壊し、世界に類をみない経済効率の悪い三里塚空港=新東京国際空港すらが「エコ空港」を自称するしまつだ。
 しかしそれは、結局のところ社会問題として人々の関心をあつめているゴミ問題や自然環境破壊、あるいは環境ホルモンや遺伝子組み換え作物といった新しい食品公害への不安にじょうじて、消費者の目先をかえて利潤を追求する「猫だまし商法」にすぎないのも明らかだ。
 そして他方では、膨大な廃棄物を減量しようとする社会的規制は遅々としてすすまず、儲けの少ないいエコ商品は、それがどれほどエコロジーとして優れた製品やアイデアだあろうとも打ち捨てられている。
 こうした事態に抗して、小さいながらも実践的に突破口を切り開こうとはじまったのが、三里塚の地球的課題の実験村であると思う。だからそれは、空港建設という巨大開発政策に対する「対案」であると同時に、大量生産と大量消費の戦後資本主義というシステムに対する根本的な対案としての問を発する試みでもあるだろう。
 だから実験村のシンポジウムには、世代や歴史的経緯を越えて、少しおおげさに言えば自らの生きざまとしてエコエネルギーに取り組んだり、ゴミ問題に取り組んだりしている人々が集うのであろう。
 第3回目をむかえた実験村シンポは、かつての反権力闘争の象徴としての三里塚という位置にとどまらない、新しい可能性を垣間見せる人々と実践的経験が集いはじめたことを感じさせるものだった。

(S)


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