全日建ホテル瑞鳳労組は
倒産なんかに負けないぞ!
現地で激励行動を展開


超豪華ホテルの倒産

 7月11-12日の両日、全日建ホテル瑞鳳労働組合による倒産争議を支援し、5月の従業員寮立ち退きの強制執行を糾弾する現地激励行動が、宮城県仙台市で行われた。
 ホテル瑞鳳はバブル経済が絶頂期を迎えていた1989年、「仙台の奥座敷」といわれる秋保(あきゅう)温泉に「スーパーリゾート」を謳い文句に開業した超豪華ホテルで、本館総工費が500億円、開閉式天井をもつ豪華コンベンションホール、一泊料金が80万円のスイートルーム、池に泳ぐ錦鯉も一匹数百万など、その豪華さで秋保温泉の名を全国にとどろかせ、一世を風靡したホテルだった。そのホテル瑞鳳が事実上の倒産状態に陥ったのは昨年5月、和議の申請が行われてからである。現在は詐欺罪容疑で収監されている当時の経営者・千葉房子(千葉観光グループ)の放漫経営と、メインバンクであった北海道拓殖銀行の倒産がその引き金になった。
 その後、和議申請中にもかかわらず他の会社に譲渡が行われたり、それとは別の会社に経営委託がされたりと不透明な動きがあったが、ついに今年1月、仙台地裁の破産宣告によって倒産に追いこまれた。

全日建への加盟と強制執行

 経営危機の顕在化に不安をいだいた労働者たちは昨年2月、調理場を中心にゼンセン同盟ホテル瑞鳳労組を結成し、和議申請後もホテルの再開を願って「激安セール」を企画して満室の営業実績を実現したり、破産宣告後の従業員寮退去要求に対しても期限の猶予を求めて管財人に話し合いの要請をしたりしてきたのだが、組合側の対応が不十分なままに破産管財人主導の一方的な破産手続きがすすめられ、労働者の要求や願いは一向に顧みられない状態がつづいてきたという。
 思い余った浜田委員長は今年4月、テレビ報道で知った「カメラのニシダ」再建委員会(埼玉県大宮市・東京労組埼玉支部)を訪ね、元従業員たちのホテル再開の願いや寮の追い立てといった窮状を訴えて支援を要請し、5月16日にはホテル瑞鳳労組の臨時大会を開いてゼンセン同盟からの脱退と全日建連帯労組への加盟を満場一致で決定した。地元の宮城合同労組(全国一般全国協)への加盟も打診されたが、結局は全日建連帯労組に加盟して闘うことになったという。
 そして直後の5月24日、従業員寮で生活していた児童・生徒2名を含む11世帯15名に対する強制退去が、宮城県警の機動隊ら100名もの動員で強行された。だが全国で倒産争議を闘う労働者に支援されたホテル瑞鳳労組は、翌日には従業員寮の敷地に隣接する土地を借りてプレハブの組合事務所を建て、強制執行の命令を出した仙台地裁、話し合いの要請すら拒絶しつづける破産管財人・阿部弁護士の人権侵害に抗議し、労働債権の支払いと謝罪を求めて闘いつづけている。
 7月11-12日の現地行動は、このホテル瑞鳳労組の激励と強制執行糾弾とあわせ、仙台地裁と管財人・阿部弁護士、そして拓銀債権を引き継いで最大の債権者となっている整理回収機構の仙台支社への要請および申し入れのために、全日建連帯労組、労働者の権利と倒産問題研究会、中小民間労組懇談会が呼びかけた行動であった。

大雨の中の現地激励行動

 決起集会と市内のデモ行進が行われた11日の仙台は、時折土砂降りの雨がふり、大雨・洪水警報が出されていた。しかしこの悪天候にもかかわらず、宮城県庁と仙台市役所前にある勾当台(こうとうだい)公園の野外音楽堂には、集会開催時間の午後2時頃までに、東京などから駆けつけた支援の仲間たちが約60人、地元仙台の支援の仲間たちも50人余り、当該のホテル瑞鳳労組から20人ほどが集まって集会がおこなわれた。その後の市内のデモ行進では、浜田委員長がデモの先頭で自らマイクを握り、人々にホテル瑞鳳争議の現状と支援を訴えつづけた。
 デモ終了後は、東京からの支援の仲間を中心に秋保に向かい、瑞鳳労組の仲間の案内で組合事務所や、閉鎖されたまま放置されているホテルなど現地を見学し、夜は秋保温泉の旅館で交流激励集会がもたれた。
 翌日は朝10時に仙台地裁前に集合、裁判所への申し入れ、裁判所の向かいにある破産管財人・阿部弁護士の事務所への申し入れと抗議行動、そして整理回収機構仙台支社への申し入れ行動などが行われた。

 仙台地裁と管財人による強引な破産手続きは、「やくざがらみ」という偏見と先入観にもとづいている。実際に生活をしている元従業員を寮から強制排除した暴挙、ホテルの再開を願い、だからこそ閉鎖中の建物のメンテナンスを請け負う意向すら表明している労働組合の要請の無視などは、そうした偏見と先入観の結果である。だがこうした労働者の要請は、破産財団が管理する資産価値の目減りを防ぐなど、むしろ破産手続き上のメリットにすらなる。これが今回の申し入れ行動を通じて明らかにされ始めた。
 同時に、「まともな労働組合」が存在する破産事件を一度でも経験した判事や管財人がいれば、意図的な労組潰しでもなければ常識的事柄である労働債権への配慮は、仙台地裁と管財人の労働法に関する無知のゆえに、前代未聞の従業員寮への強制執行によってないがしろにされた。その意味でホテル瑞鳳争議は、労働組合が裁判所や管財人の無知を正し、労働運動が脆弱な地方都市でも労働者の権利が蹂躙されるような破産事件の再発を防ぐ闘いであり、だからまた労働法制の一連の改悪や破産法の改悪という、今日の国家・社会再編に抗する全国的戦線の構築にも寄与する闘いでもあると言えよう。      

(T.K)


環境・生活topへ HPTOPへ