国労闘争団が「解決要求」を公表
国家的不当労働行為による総ての実損と名誉の回復を
解決局面のはじまり、これからの課題


解決局面と闘争団の要求

 6月16日付けの「朝日新聞」によれば、国労闘争団全国連絡会議は6月15〜16日の2日間、東京で全国代表者会議を開き、闘争団としての解決要求を決めた。その内容は(1)採用差別という不当労働行為を是正するために、国労組合員966人全員を87年4月にさかのぼって地元JRに採用すること、(2)87年にJRに採用されていれば得られた賃金、一時金など390億円の支払い(5月末現在)などの4項目だという。
 これより3週間前の5月25日、参議院7会派(自民、民主、共産、社民、自由、公明、参議院の会)が首相官邸を訪れ、野中官房長官に対して「国鉄分割・民営化に伴い国労組合員など1047人がJRに不採用になっている問題について、人道的立場で早期解決されるよう対応してもらいたい」と要請し、官房長官がそれに応じたことによって、国鉄闘争はいよいよ解決局面に突入した。解決局面への突入といっても、それが国労闘争団と家族に納得のいく解決水準であるか否かは別の問題である。
 3月の臨時全国大会で国労が国鉄改革法を認め、高橋国労委員長が(1)改革法の承認は同法の趣旨を認めたもの、(2)訴訟案件については解決の方向付けが明らかになった時点で取り下げを検討する、などを盛り込んだ念書を自民党と自由党に提出したことによって、ようやく政治が動き出したのである。しかし臨時大会決定では足りずに念書まで要求されたこと、ここに国家的不当労働行為との闘いがいかに困難であるかが示されている。言い換えればそれは、国鉄闘争の到達水準、力関係の反映と言うほかはない。今後の展望を考えるときこの点の冷徹な認識と、その上に立っての新しい戦略・戦術が検討される必要があるだろう。
 そうした矢先に国労闘争団全国連絡会議が全国代表者会議を開き、絶対に譲れない要求を全国36闘争団の総意として決定した意義は、非常に大きい。闘争団が譲れない要求を公表し、生活体制の確立を含めて要求獲得まで闘う決意を宣言したことによって、闘争のイメージは極めて具体的になった。
 JR連合との合併と企業内的な組合への復帰を画策し、そのために採用差別事件の低水準の解決を目論んでいたチャレンジグループなどの思惑は、この闘争団の決定によって完全に吹き飛んでしまった。

イニシアチブの再確立へ

 国鉄闘争はこの間、これまで積み上げてきた闘争領域の拡大による社会的闘いとの結合路線をさらに押し進め、倒産・失業NO!運動などと連動する事でより一層高い解決水準を目指すのか、それとも相手の言い値に近い低水準で採用差別事件の解決を図り、従来型の企業内組合に復帰するのかの鋭い分岐点に立っていた。このせめぎ合いはこの後もつづくが、争議の当該である闘争団が、その主体性を内外に明らかにしたことによって、国労本部やエリア幹部による思惑だけで解決することは、事実上不可能になった。
 しかも5月27日の闘争団・家族激励集会や、5・28不当判決1周年集会での闘争団と家族は、一様に次の一点を訴えていた。それは地元JR復帰を通じた「採用差別からの名誉回復」である。彼ら彼女らの発言には、この一点を獲得するまで闘いを止めるわけには行かないという気概があふれていた。
 この気概を5・27〜28の闘いで示したことと、譲れない解決内容を闘争団の総意として公表したことによって、局面は再び変わろうとしている。それは昨年の不当な5・28東京地裁判決のショックから闘争団・家族が完全に立ち直ったということであり、闘争団・家族が闘いのイニシアティブを再獲得する局面の到来と言えるだろう。
 
本紙98号(99年4月)で述べたように、5・28東京地裁不当判決に対するILO提訴を使った大胆な支援戦線の拡大と、倒産・失業という現在の局面にかみ合った社会的領域での闘争の一層の拡大に、今こそ挑戦しなければならない。    

(あらい・たかよし)


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