〃綱領的蘇生〃の中断から〃綱領的再建〃にむけた闘いの連続性

(労働者の旗創刊準備2号:1988年6月10日刊掲載)                                    木戸 文子


第十三期三中委決定による同盟の解党と告発闘争の抹殺

 日本革命的共産主義者同盟(JR)中央委員会は三中委決定によって同盟を政治的に崩壊させてしまった。これは階級闘争に対する同盟の全面的責任放棄であるとともに、組織内女性差別問題克服の放棄をも意味した。
三里塚労農合宿所における女性活動家Aさんの告発を契機に、女性同志xx人の組織内強姦告発による五年間にも及ぶ〃とりくみ〃が開始した。しかし女性同志の闘いに向けた指導部の側の路線的破綻とその結果としての〃とりくみ〃上の誤りは「第四インター女性解放グループ」(以下「女性G」とする)の組織提起に現れた誤りを産み出させる結果となった。同盟指導部の破綻は、@強姦発生の根拠を七0年代綱領の問題としては総括しなかったこと A根絶すべき組織内女性差別行為としての強姦と、避け得られない差別(女性)を混同して対処したことB組織主導を放棄し C女性同志を選別排除したものであった。
 「女性G」は政治的絶望によって脱盟した女性同志をも含めた「女性の団結」によって、反女性差別の闘いを目指し全国結集をなしたものであったが、その提起によって三中委で審議された内容は「@「女性G」の全国結集を同盟組織に混入すること A同盟費と夏冬カンパの一括徴収と必要額の差し引き残額を同盟に納入すること B文書は請求するが会議の出欠は自由選択。」と受け取らざるをえない内容であった。
 三中委ではこれに対して「…評価を持つことはできないが混乱のないよう実務的に対応する。」という主旨の政治局統一見解が提起されたものであったが、動議により「財政に関する提起を受け入れる」という無条件拝脆の対案が討論もなく可否同数、議長裁決によって決定された。
 三中委に木戸は数人の女性同志と協議の上「規約改正のための臨時全国大会の開催」を動議として提起した。それは、@強姦犯罪者に対する統制処分の改定 A女性及び障害者に対する同盟費の減額であった。賛成発言の後、第十四回大会に向けて準備討論を開始する旨の決定がなされた。これで漸く機関主導による組織討論が開始されるものと期待したものだったが、しかし「受け入れる」の決定はこれが当初から幻想であったということを暴露したものである。
 強姦告発者は〃第四インターは腐っている。官僚主義! 組織にとどまらせるな〃など糾弾して組織を問うた。この事は同盟を自らの政治基盤とする意識性の上で、組織の変革を獲得しようとしたものであった。したがって三中委決定はこれ等告発者たちの政治的意識の抹殺を意味するものであった。それは党員資格に関する前提条件の放棄であり、木戸意見書八章までの綱領的蘇生のための闘争の基盤である組織に組織的崩壊をもたらしその連続性を破壊するという許せない暴挙であった。

強姦告発が問うた七0年代同盟路線

 同盟にあるまじき組織内強姦は、告発として提起せざるを得なかった組織のありかた、作られかたの問題であり、それは七0年代同盟路線に起因したものであった。この件の発生は七0年代同盟路線の結果、没主体的に作られた同盟員のブルジョア思想(生活習慣にまで貫かれた)への埋没の結果であり、こうした組織のありかたによって必然的に同盟内に不平等がもたらされ「差別温存構造」として問われた組織実態が生み出されたものであった。
 同盟七0年代路線の急進主義的・カンパニア的性格は、メンバーの思想を主体的に変革せしめることが不可能であった。それは組織的変革と個的変革を一つに統一した社会主義的実践の欠落が、思想闘争の放置を必然化し、男女同志間にブルジョア的退廃関係をもたらしたものであった。
 女性同志間の政治的差異・対立は、これを綱領上の問題として認識しようとする少数と、性差別に起因するものと考える多数に大別され、その対立は徐々に鮮明化した。それは機関主導による組織討論を主張する立場と、組織会議を拒否し被害者の女性として団結するという二つの傾向の対立としても表現された。差別を階級社会の必然とし、資本主義を成立させる基盤として捉らえ、女性解放と階級の解放を一体のものとするマルクス主義の立場は、機関の側の破綻と〃とりくみ〃の誤りの結果「女性G」の同志たちに深い疑いを特たせてしまった。
 多数の同志は強姦犯罪事実とその他の女性差別を事実的にも思想的にも区別をつけず、女性差別の即時廃絶を追求し「女性が強姦といえば強姦・差別と言えば差別」と主張し、組織内女性差別の実態とそれを生み出した綱領上の問題を切り離して、組織の差別温存構造や官僚主義を男性によってもたらされる必然的組織悪であると見なすに至った。しかし、これは機関のとりくみ上の政治的破綻がプライバシーを侵害し告発が意図した組織再建の悲願を絶望させ個的なものとして告発者の政治的意識を解体させた作用の結果であったと言わなければならない。
 組織内強姦問題を七0年代同盟路線の破綻との関係で認識することができないならば、それは強姦を個人犯罪としてしまうか又は社会的な性差別の現象として見なす以外に方法はなかった。
 大多数の男性同志もこうして強姦と女性差別一般の間にある本質的差異を思想的に分別することが不可能となり、差別者としての自己嫌悪に解体され政治的本質を見失い、女性に拝脆して寄りすがる以外にぬけ道はなかったのである。十三期三中委決定はその拝脆の対象を佼猾にも政治的に選別した。その結果は組織内強姦問題を綱領・路線問題として追求する少数の女性に対する排除と、綱領的問題から切り離し「革命的組織の結集自体を問い直さねば」と主張する「女性G」に対する拝脆として現れた。その彼女たちの主張は、性差別による抑圧現象を階級対立に比較してより本質的であると誤認したものである。

綱領的蘇生の個人論文から同盟再建の組織討論へ

 今思えば組織内強姦の発生の根源と〃とりくみ〃上の問題点と、三中委無条件拝脆の結果としての解党の決定は、そのいずれも七0年代同盟路線そのものの中に内包されていたのである。強姦告発は女性同志が同盟建設をになった者として、その告発の根源を主体的にも自己切開しようとし、総括しようとした貴重な闘いであった。その告発を組織内に提起した目的は、女性差別一般を空想的にあるいはスローガン的に絶滅せんとしたものではなく、階級社会の必然悪としての女性差別を思想的実践的に闘うためにも同盟の組織と綱領を、そして同盟員相互を前衛党にふさわしいものとして蘇生再建させようとし、それによって階級の解放・女性解放の闘いを大きく前進させるための、身を呈しての告発であった。この立場からは三中委決定を撤回しない組織を第四インターナショナル日本支部として認めることは絶対にできないのである。
 第四インターナショナル日本支部の綱領的再建のための先鋭な論争は、差別を克服する思想的実践によって、労働者階級の樹海を背景に深く広大に展開されねばならない。階級闘争の質的前進と差別の克服は一体不分離のものであり、それは必然的に七0年代同盟の政治総括の論争として開始される。女性に限らず〃拝脆〃というありかたは差別の佼猾な変形現象であり、民主的な人間関係さえも形成しえないものである。
 JRの政治的破綻を確認し、第四インターナショナル日本支部再建のために立ち上がった「再建準G」は極めて少数ではあるが、主体的に七0年代同盟総括の先鋭な論争に着手しつつある。私は、ここに参加することによってのみ「木戸意見書」による闘争の連続性を発展させうると考えている。

一九八八年五月


総括topへ 旗topへ hptopへ