対イラク米英修正決議案をめぐる攻防の意味

2003年3月8日

気になる出来事topへ hptopへ

 アメリカ・イギリス・スペインが共同で対イラク修正決議案を提案したことで、国連安保理における攻防は、いよいよ最終局面に入った。決議案は、イラクが国連決議に従って武装解除をする期限を3月17日と限定し、それまでに安保理が、イラクが武装解除に無条件・迅速かつ積極的な協力を行ったと判断しないかぎり、「イラク攻撃」は避けられないとしている。
 そしてアメリカのブッシュ政権は、「安保理がイラクの武装解除に躊躇し、決議案を採択しないのなら、国連安保理は事態の解決能力を持たないことが明らかになり、国連の権威は低下する」と脅し、決議案が採択されない場合は、同盟する諸国によってイラクを攻撃することを言明した。
 しかし、無法なアメリカの行動に異議を唱えることが国連の権威を本当に低下させるのだろうか。いや、無法なアメリカの行動に承認を与えることで国連の権威は維持されるのだろうか。ここで言う国連の権威とはなんだろうか。
 イラクが核兵器を持たないことは国連査察団の元メンバーなどの証言で明らかなように、明白な事実であり、今回の安保理への報告でも「イラクが大量破壊兵器を開発したという証拠はない」と明言されている。なのにあくまでも「イラクが核兵器を開発した怖れがあり、ないというはっきりした証拠を示すことがイラクの義務だ」というアメリカの主張こそ、言いがかりもはなはだしいのである。このアメリカのいいがかりに承認を与え、イラク攻撃に正当性を与えてしまえば、国連はアメリカが世界を支配する道具と成り下がることを意味する。そしてアメリカのイラク攻撃に承認を与えず、それでもアメリカが同盟国とともにイラクを攻撃した時には、アメリカにはイラクを攻撃する正当性は失われその行動は世界を単独で支配したいと言う剥き出しのエゴイズムに彩られ、世界中に、とりわけアラブの諸国に反米のうねりをひろげ、それはやがてアメリカ国内にも跳ね返って行き、ブッシュ政権の足元を揺るがすであろう。この時、最後までアメリカのイラク攻撃に承認を与えなかった国連は、「アメリカの世界支配の隠れ蓑としての権威」ではなく、アメリカの単独支配に抵抗する諸国家の協調の象徴的存在としての権威を帯びることとなる。
 今イラク問題を通じて問われているのは、単独の超帝国主義国家としてのアメリカによる単独世界支配秩序を容認するのか、それとも諸国家が互いの利害を調整し、互いの国家主権を制限しつつ、国連憲章にうたわれたような平和で豊かな世界を目指すのかである。イラク攻撃に反対しているフランス・ロシア・中国は、それぞれの利害でアメリカとの決定的な対立を避けるために決議を棄権する可能性もあると報道されているが、国連安保理の理事国は、個々の国の利害やアメリカとの関係で動いてはならないし、諸国民は自国の政府がそのような狭い利害に基づいて動かないよう、大きな声をあげ行動すべき時なのである。

(スナガ)


気になる出来事topへ hptopへ