おそまつな茶番劇・旧石器捏造の再検証発掘

2001年5月24日

気になる出来事topへ hptopへ

 旧石器捏造問題が、いよいよ大詰めにきた。先日来報道されているように東北旧石器文化研究所の藤村新一元副理事長による旧石器捏造は、前期旧石器に続いて、中期旧石器の遺跡も彼の捏造であることがはっきりし、「神の手」と呼ばれた彼の「業績」は、その当初の1976年以来すべてが捏造であったことがはっきりしてきた。
 彼の学会デビューの地である、宮城県の座散乱木遺跡の中期旧石器は、それが採取された地層を含む上下の地層全てが、火山の火砕流が頻発していた環境にあったことが確認され、旧石器だけではなく、遺跡そのものが捏造であったことがはっきりした。
 遺跡の再確認の発掘を行っていた日本考古学協会らの調査団が19日に、以上の内容の中間報告を出したからである。
 確認作業は、複数の火山学者・地質学者の立会いで、藤村らが「旧石器」を採取したとされる地層とその上下の地層を再確認したところ、そこから大量の軽石が確認され、「旧石器」は火砕流の最中から発見されたことがわかったからである。そして一連の最発掘調査でも、石器は一点も出ず、過去に発掘された石器にも地表にあってこそつく農機具による擦り傷が確認されていることからも、中期旧石器時代の遺跡としての座散乱木遺跡そのものが捏造との結論にいたったという。
 しかし、なぜ今ごろこの結論を、多額の発掘調査をして出さねばならなかったのだろうか。この遺跡は「発見」当初から疑念がもたれていた。群馬大学の早川氏によれば、藤村が発見した旧石器への疑惑は、火山灰編年学者の中に1980年代にすでにあったという。座散乱木遺跡で藤村が1981年に旧石器を取り出した安沢下部火山灰は、火山学者の目には、火砕流の堆積物のようにみえた。火山噴火によって瞬時に形成された火砕流堆積物の内部から石器が出土したのなら、そこが当時の生活面だったとは考えられない。町田洋氏らは、そこからの旧石器出土の事実にたいして、「火砕流らしいテフラの性質からみると問題がある」と述べた(渡辺直経編「古文化財に関する保存科学と人文・自然科学」865-928ページ、1984年3月)のだそうである。
 しかしこの論文をつかって1989年に、この座散乱遺跡の地層が火砕流であることを論じた論文が日本第四紀学会発行の学術誌に書かれはしたが、その後の20万年・30万年・・・と続く「発見」で、いつしか忘れさられたという。
 いや、忘れ去られたのではなく、無視されたのだ。当時、考古学会の内部からも痛烈な批判はでていた。1981年から批判を繰り返していた、考古学者の小田氏とアメリカ人のキーリ氏とが1986年に、人類学の雑誌に、批判論文を出した。発見は捏造だとするもの。論拠は土。数万年も地中に埋まっていた石器が、水平の同一平面で発見されるはずがないというもの。縄文時代の遺跡や後期旧石器の遺跡でも、地中の木の根やモグラなどにより地層がかく乱されて、石器が上下し、なんと同じ石器でも上下に1.5メートルも離れて発見された例があるそうだ。そして座散乱遺跡の地層は事前調査の報告書にも書かれていたそうだが、明確な火砕流によるもので、ここから人の生活のあとが出るはずがないという主張だった。
 早川氏は以上の批判は「忘れさられた」としているが、キーリ氏によると、これは無視されたというのが正確だ。1988年には第四紀学会の総会が仙台でもたれ、地質学者たちが座散乱木遺跡の問題の地層を見学して「火砕流」であることを確認している。だが、「旧石器」を「発見した」考古学者らは、「地質学者らの見解には同意できない」と発言した。
 日本における中期・前期旧石器の捏造は、「発見」の当初から見抜かれていたのである。しかし日本の考古学者の多くはこれを無視した。
 この事実経過を確認するだけで、捏造は明らかである。
 ではなぜ再発掘が必要なのか。これは、考古学者らがやってきたことが「科学」をも無視した恣意的なものであった事実を白日の下にさらしたくなかったからだとしか考えられない。旧石器「発見」以来の経過を詳細に検証し、そこから結論を導き出すという「安上がりな方法」だと、中期・前期旧石器の「発見」に狂喜した「学者」たちが、自らの業績を上げるために、科学的批判を無視した事実が、世間一般に知られてしまう。
この再発掘は、彼ら学者の「権威」を守るためにのみ行われたのだ。とんだ茶番劇である。

 主な論文は以下のサイトで読むことができる。

 早川氏の論文:http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/paper/bensei/index.html
 小田・キーリ「1986年」論文:http://www.ao.jpn.org/kuroshio/86critical.htm
 キーリ「土と前期旧石器」論文;http://www.amy.hi-ho.ne.jp/mizuy/zenki/dirt-hoax.html


気になる出来事topへ hptopへ