【時評】自衛隊で遊ぶ石原・本当の災害は無視
東京都防災訓練と三宅島の噴火災害


 恒例になってしまった東京都の防災訓練だが、今年は石原都知事の肝入りで自衛隊が大量動員されたことで一段と大きな話題になり、当然ながら石原式防災訓練に反対する集会やデモも、いつもの年より少しテンションが高かったかもしれない。
 普通の人が、普段はまったくお目にかかれない自衛隊の装甲車両が東京銀座のど真ん中や都庁前に現れて我が物顔に走り回り、大災害の中で騒乱が起きたという、ほとんど現実味のない想定で大規模な防災訓練が行われたことはたしかにセンセーショナルだし、これに賛成であれ反対であれ、ニュースを商品として販売する新聞やテレビの側から見れば絵になる事件だから、ちょっとした大騒ぎになるのは判らなくはない。
 でもどこか違うと言うか、マスコミの石原批判がなんとなく的外れな印象がある。
 このちょっとした違和感は、自衛隊を大動員した防災訓練が行われた9月3日が、現に進行中の本物の自然大災害である三宅島の雄山の噴火活動が火山噴火予知連の予想に反して活発になり、「全島避難は行わない」と言いつづけていた石原が、三宅島村役場の全島避難指示を受けて急転直下、三宅島避難住民の受け入れを決めた9月1日の直後だったことが原因だったと思う。
 総合防災訓練と言うなら、現在進行形の三宅島の噴火災害への対処は、言い方は悪いけれど、訓練の格好の実践的素材のはずだ。その現実の災害で対処を間違い、結果としてではあれ避難指示の遅れや避難住民の受け入れ先の不備など、欠陥が明らかになった防災マニュアルをチェックする方がよほど訓練の名に値すると素朴に思えたからだ。
 ところが石原への批判は、相も変わらず都心に出現した装甲車両や武装自衛隊員の地下鉄移動などに焦点をあてたものばかりで、どうもいまひとつ、彼が答えに窮するような鋭さを欠いている感じだった。しかも動員した自衛隊員を前に得意顔で軍だ演習だを連発する石原は、私の目には、おもちゃを部屋いっぱいにひろげて遊びたがるわがまま坊主がその願望を満たして有頂天になっている、そんな姿とダブって見えた。
 もちろんそれは危険な遊びには違いなのだが、それを叱る大人の方は、現に起きている災害への対処の方がいかに重要かをキチンと説明できなければ、わがまま坊主をギャフンとは言わせられないと思うのだ。                                           (Q)


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