【時評】:厚生省なんていらない!
女性差別あばく医薬品認可の二重基準
男性の性的不能治療薬「バイアグラ」の発売が話題を呼んでいる。アメリカで発売された直後から、男性がよく読むスポーツ紙などで取り上げられ、その後も個人による直接輸入とか副作用で死亡事故が起きるなど、なにかと世間をさわがせてきたこの薬品を、厚生省が医薬品として正式に認可したのは1月25日であった。申請からわずか数カ月というスピード認可である。
もちろん性的不能に悩む、だが副作用の関係で心臓病などの持病がないという条件を満たす男性にとって、この医薬品は福音ではあろう。だからわたしは、この医薬品認可そのものに異議を唱えるつもりはない。しかしである。この「男性用」の性的不能治療薬のスピード認可と、30年以上も認可されないできた「女性用」経口避妊薬「ピル」の落差は、どう考えても腑に落ちない。
ちなみにピルの認可申請が日本ではじめて出されたのは1965年。だから正確には34年間も、この認可申請はたなざらしだったということになる。しかも途中、何度か認可の機運が盛り上がった時期がありながら、やれ性道徳が乱れるだの、やれ性病が蔓延するだの、はては出生率が下がるだのと、時代錯誤もはなはだしいばかげた理由で認可が先送りされてきたことを考えれば、バイアグラ認可との落差は一目瞭然である。
ピルが日本で認可されなかったのは、「世界最高の品質」を誇るコンドーム製造業界と、妊娠中絶という女性にとって危険な医療行為でぼろ儲けをしている産婦人科医師会の陰謀ではないかと思っていたが、このバイアグラとピルの扱いについてのギャップ、いや完全なダブルスタンダードは、日本で最も悪どい厚生省という官僚機構(だって70年代の公害問題からエイズ感染症問題、最近のダイオキシン汚染まで、これほど民衆を痛めつけ苦しませてきた役所はないだろ!)が、徹頭徹尾の女性差別主義であることも暴露した。こういった輩が「女性の福祉」を騙って保育行政や医療行政を管轄し、「不良な子孫の出生を防止する」というとんでもない目的で定められた優生保護法に固執している現代日本では、結婚よりも未婚を選択する女性が増え、出生率が低下しつづけて当然だ。
その厚生省はしかし、増加する高齢者の年金を支える若年層が少ないことを理由に、年金制度の「抜本的改正」を画策する。こんな悪どい役所は、潰した方がよっぽど世のため人のためになると思ってしまうのは、わたし一人だけだろうか。
(G)