【国鉄闘争】国労本部が組織の分割を提案

左派の自立的闘争態勢の確立を

インターナショナル第133号(2003年3月号)掲載


▼闘争団を排除する国労の分割

 国鉄労働組合(=国労)はさる2月15日に中央委員会を開き、懸案となっている鉄建公団訴訟原告団に対する査問の実施方法の変更を提案すると同時に、ここまで全国単一労組として維持してきた国労組織を、エリア本部ごとに、要するにJR各社ごとに分割するとの方針を本部が提案し、今夏に予定されている定期全国大会まで職場討議にかけることを拍手で確認した。

 国労組織のJR各社ごとの分割は、単に国鉄の分割民営化に反対する大義名分の放棄とか、エリア本部に根強くあった「争議終結・労使関係正常化」の要求にそった組織改編ということではまったくない。それはJRに採用されずに闘争団を結成した国労組合員から組合員の資格を奪い、闘争団と国労組織を名実ともに切り離して国労闘争団の最終的解体をねらうものであり、4党合意による政治決着の道が閉ざされた国労右派連合に最後に残された手段と言うべきである。
 いうまでもなく国鉄闘争の、国家と対決する大衆的展開の土台は、国労が企業内労組であるにもかかわらず、いや正確には国鉄の分割以降は実態としてはJR各社労組(エリア本部)の連合体になったにもかかわらず、JRに不採用となった組合員をそのまま組合員として認め、組織的援助も含めて共に国家的不当労働行為と闘ってきたことにある。だが国労組織を公式にJR各社ごとに分割して組織名称を変えれば、JR側がJR職員ではない闘争団組合員の組合員資格を認めないのは誰の目にも明らかである。
 それは分割された国労と、闘争団にとどまる以外にない組合員の絆を解体し、国労という官僚化した労働組合を争議継続の義務から最終的に「開放する」、究極の争議終結の手段に他ならない。
 争議主体である闘争団の意志に反してまで4党合意を強行しようとし、なおかつ激しい抵抗を受けて挫折した国労右派連合は、こうしてJRの懐に逃げ込み、企業内労組へと回帰することでJR連合の軍門に下る最後の道に踏み出す決意をしたのだ。

▼恭順の証し−統制処分

 ここまで堕落を深めた国労本部と国労右派連合にとって、280人にもおよぶ鉄建公団訴訟団の査問を、北海道35人と九州10人の中心的な組合員にだけ実施し、これで統制処分を発動しようとするごまかしも、すでに後ろめたさも感じないのだろう。
 2月の中央委員会に本部が提案したこの査問方針も、国労組織分割の提案と同様に拍手による採択が強行された。
 しかし国労本部が強行しようとしているこの査問方法は、実際には何の効果も、何の意味も持ちはしない。なぜなら国労本部と右派連合は、すでに国労を組織的に分割することで国労闘争団組合員を切る捨てる決意を固めたのであり、統制処分を発動してまで訴訟団を排除する現実的必要はほとんどなくなっているからである。
 それにもかかわらず、中心的カードルに狙いを絞って形式的な統制処分を発動しようとするのは、国労組織を分割してJRの懐に逃げ込むに際して必要な、いわばJRとJR連合に対する身の証を立てることくらいしか理由はない。
 それはJR各社かJR連合から要請されたものであれ、彼らの示唆を受けて自ら積極的に選び取った結果であれ、こうした身の証しを必要だと感じる国労右派連合が、JR連合とのイニシアチブ争いなどできるはずもないことを確認するものである。国労東京地本の組合員数を確保していれば、JR東日本の企業内労組に回帰した後でも主流派に復帰できるだろうなどといった幻想に惑わされて4党合意賛成派に豹変したかつての「左派」は、JR連合との組織合併以前に次々と突きつけられるハードルを超えようと躍起になればなるほど、組織内の荒廃がすすみ労働組合としての信頼を失いつづける。
 だが彼らがこの厳しい労働者の反応に気づくのは、すでに大半の組織的影響力を失い、JRとJR連合の意のままに翻弄されるだけの現実に直面したときであろうか。

▼自立的な運動体への飛躍

 国労本部と右派連合の命脈は尽きた。そしてこの勢力に従って4党合意に賛成してきた国労多数派と共には、国鉄労働運動の戦闘的再生をめざすことはできないだろう。新たな展望のもとに、闘争団と左派が独自の道を切り開くべきときが迫りつつある。
 いまや問題の核心は、鉄建公団訴訟団への統制処分の行方や、闘争団組合員が国労の組合員資格を持つか否かではない。むしろ国労本部の激しい切り崩しや、右派がふりまくデマや脅しにもかかわらず、政府・国交省そして自民党の期待を裏切って戦線に踏みとどまった三桁の国労闘争団が、国家的不当労働行為の被害当事者として、国労本部の動向がどうあれ自立的に闘争継続の決意を改めて確認し、鉄建公団訴訟団のさらなる拡大を追求する、早期解決をめざす展望をかかげて闘争体制を確立することにある。
 15年におよぶあらゆる闘争の成果をも投げ捨て、争議当事者も自ら切り捨て、そうしてまでも企業内労組に逃げ帰ろうと決意をかためた国労多数派への幻想を断ち切り、JR内で増加しつづけている非正規雇用労働者を対等の仲間・労働組合員として組織する自立的な運動体へと自らを飛躍させようとすること、これこそが闘争団と国労内で本部と右派連合の画策に抵抗をつづける左派勢力が、鉄建公団訴訟をつうじて争議の勝利的解決に向けて前進できる道であろう。

(K・S)


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