国労定期大会と与党3党の「4党合意」離脱声明

いまこそ鉄建公団訴訟団の飛躍的拡大へ

(インターナショナル131号:2002年12月号掲載)


 11月25日に東京の社会文化会館で開催された国労第70回定期全国大会は、4党合意にもとづく解決の努力をつづけるなどとする執行部提案の運動方針を、賛成75、反対27、白票7、棄権1の賛成多数で可決した。
 だがそれから半月もたたない12月6日、70回大会方針の大前提であった4党合意は、自民、公明、保守の与党3党が、国労執行部の対応を「誠意を裏切る不誠実な行為」と非難して離脱する声明を発表し、名実ともに消滅してしまったのである。
 国労内部に分裂的状況をつくり出し、闘争団全国連絡会の内部にも亀裂と混乱をもたらした4党合意と国労右派連合の路線は、こうして最終的に破産した。
 だがこれは、国労の闘う団結の回復を意味しないし、国鉄闘争の勝利的解決の展望が切り開かれたわけでもない。むしろ国労内の左右の分岐は決定的に深まり、右派連合は、昨年12月に秋田地本を中心とする600人が国労を脱退して結成した「ジェイアール東日本ユニオン」に追随しようと、新たな分裂組合結成の衝動に駆られはじめている。

          挫折した統制処分の発動

 第70回定期大会の最大の焦点は、今年5月の臨時大会で決定した「最高裁への第三者参加申し立て及び鉄建公団訴訟に参加する闘争団員」に対する、統制処分の発動の成否だった【本紙126号、127号参照】。
 大会では寺内書記長が、「4党合意にもとづく解決で問題になっているのは鉄建訴訟だけであり、せめて原告団の数を2桁(100人未満)まで減らすべきと言われている」と述べ、自民党の訴訟団切り崩し要求に卑屈に追随する姿勢をあからさまにした。ところが他方では「対象者(鉄建公団訴訟団)が多数(280人余)なので、事実関係の調査や証拠書類の収集に時間がかかる」ことを理由に、処分手続きを継続するために査問委員会を残すことだけを大会に提案、それすら賛成73票でかろうじて承認されただけであった。
 この国労本部の対応は、期限を区切った最後通牒に応じなければ処分の発動を示唆した5月臨時大会の方針に比べて、明らかに及び腰なものだった。それは、自民党には先延ばしと不誠実な対応に見えたであろうし、大会では国労右派の強硬派からも、苛立ちが表明されたのである。
 上野支部の飯島代議員はその苛立ちを代弁するように、闘う闘争団と国鉄闘争共闘会議の結成を「国労と支援共闘に分裂が持ち込まれた」と非難し、本部に対しても「大国労時代の総括がなく、説明責任を果たさないのが混乱の原因だ」と非難の矛先をむけ、「現状は痛みの先延ばしだ。永久争議か政治解決かを明確にすべきだ」と迫った。
 4党合意を盾にして、度重なる支配介入によって分裂を持ち込んだ自民党の犯罪は棚に上げ、鉄建公団訴訟という新たな闘いの可能性を切り捨てる永久争議なる非難は、もちろん右派のごまかしである。
 だが大国労時代の総括と説明責任を果たせという主張は、国労本部にとどまらず、「左派」の主体をも鋭く問うものであろう。
 例えば今大会の代議員選挙でも、鉄建公団訴訟やILO提訴を含めた闘う方針を組合員に訴える選挙戦を自ら回避し、逆に右派との談合で代議員の配分に合意した一部の協会左派や、内心では鉄建公団訴訟に最後の望みを託しながら「国労の団結」を建前に中間派にとどまる一部の革同左派などは、「大国労時代」の旧来的秩序に固執し、自らは闘う方針を提起しないことで「説明責任」を回避しているからである。
 だが与党3党の4党合意破棄によって、争議当事者を切り捨てて政治決着を図り、国労の看板を降ろしてJR連合になだれ込もうとする右派の展望は失われた。
 そしてこの動かし難い事実は、すべての国労組合員が「国労を自ら一方的に解散してJR連合の軍門に下る」か、それとも「4党合意の破産を確認して争議の主体的立て直しを図る」【本紙124号】闘う闘争団と国鉄闘争共闘会議が追求してきた道を共に担うかという選択を、待ったなしに突きつけられることを意味している。

          小泉改革の破綻が追い風になる

 鉄建公団訴訟やILOへの新たな提訴という闘う闘争団と国鉄共闘が提起する道は、もちろん即座に政府・自民党を追いつめることのできる特効薬ではない。
 だが不当労働行為の存在は認めながら、国鉄改革法23条を盾にJR各社の不当労働行為責任をことごとく否定した地裁と高裁の不当判決を打ち破り、政府・自民党に解決を迫るためにも、判決が示唆した不当労働行為の責任者である旧国鉄の責任を、つまりその継承法人である国鉄清算事業団を現在は正式に継承している鉄建公団の責任を追及するのが、当然の道筋である。
 逆に闘う展望の説明責任をはたさず、大国労時代の旧態依然たる秩序に甘んじ、結果として鉄建公団訴訟への参加を躊躇しつづける一部の左派や中間派の対応は、結局は右派による分裂の蠢動を黙認して「国労の団結」の崩壊を傍観し、国家的不当労働行為と対峙しつづけた20年におよぶ仲間たちの闘いの成果を水泡に帰して、国労の立ち枯れを放置するに等しい逡巡と言えよう。
 おりしも、4党合意にもとづく強硬な対応の背景ともなってきた小泉政権の「痛みをこらえる改革」の化けの皮がはがれ、改めて失業対策などのセーフティーネットの強化を求める声が強まりつつある。それは「リストラの原点」と言われる国鉄の分割民営化が、老後の年金さえ保障しない苛酷な大量首切りそのものであったことを訴え、人々の共感を得る運動にとって追い風である。
 しかも自民党はこうした運動が大衆的に、つまり無視しうる少数派ではなく100の単位の人々によって担われることを強く警戒していることは、「せめて2桁の訴訟団」という露骨な要求に端的に示されている。そうであれば、年金の継続をふくむ闘争団組合員の名誉回復の可能性を切り開く鍵は、闘争団組合員の多くが鉄建公団訴訟団として公然と登場することなのである。
 4党合意という右派の展望が破産したいまこそ、より多くの闘争団組合員を鉄建公団訴訟へと向かい入れる好機である。
          (K・S)


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