●国労第69回臨時大会

3党声明に屈した右派連合の転落
広範な統制処分反対運動から、国鉄労働運動の再生へ

(インターナショナルNo.127/2002年6-7月掲載)


 5月27日の国労第69回臨時全国大会は、例によって大会会場となった社会文化会館を警視庁機動隊が取り囲み、国労組合員が排除される中で行われた。
 当日、本部が提出した議案は@「最高裁への第三者参加申し立て及び鉄建公団訴訟に参加する闘争団員」が、「訴訟取り下げの最後通告(5月25日)」に応じなければ「中央執行委員会として統制処分案を決定し、速やかに査問委員会に送致する。査問委員会は規則に基づいて作業を進め処分を決定し、直近の大会で決定する」、A「臨時全国大会終了後、社民党の要請に基づき速やかに国鉄改革法関連の訴訟について取り下げることとする」、B「2月15日提出した追加情報の内容が与党および関係者に誤解と大きな不信を招いた状況に対して、その撤回と・・・・ILO(国際労働機構)に追加の情報を新たに提供する」というものであった。
 @は、闘う国労闘争団員の除名処分手続き開始の確認、Aは、国鉄改革法をタテにした不当労働行為をめぐる訴訟取り下げの確認、Bは、「政府と与党・自民党が解決交渉を開いてくれない」とのILOへの愚痴(情報提供)を撤回するということだが、採決の結果は賛成77、反対31、白票7であった。

 残念ながら本紙前号の予測どおり、国労本部は3党声明に「卑屈な屈服」で答え、協会右派と革同右派の右派連合は、与党が要求する「現状回復」にむけて、上告審補助参加申請者と鉄建公団訴訟原告団の切り崩しと切り捨てを承認したのである。
 もっとも、攻防の本番はここからとも言える。除名の決定には「大会代議員の3分の2以上の賛成」が必要であり、臨大で本部提案に賛成した77票では、大会代議員総数116の3分の2「以上」にはならないからだ。しかも7月中に臨時大会を招集できなければ、新しい代議員を選出して定期大会を開催しなければならない可能性が強まり、中間派にひろがる動揺を考えれば、本部と右派連合が除名に賛成する代議員を3分の2以上確保するのはそれほど容易なことではない。
 しかし一方では、4党合意反対派を切り捨てる何らかの実をあげなければ、政府・与党は今度こそ国労本部と右派連合を見捨てるだろう。追いつめられた国労本部は、闘争団への生活援助金の凍結を振り回して補助参加申請者と原告団の切り崩しに全力を挙げるだろうし、それでも除名が決定できない不安があれば、反対派代議員を排除する官僚統制の発動さえ辞さないかもしれない。
 こうして次の全国大会に向かう凝縮されたこの時期は、国労の右派連合にとっても、4党合意に反対して国家的不当労働行為の責任を追及し、不当に解雇された国労組合員の名誉と実損回復のために闘いつづけようとする左派にとっても、文字通りの意味で正念場なのである。

人権と民主主義を取り戻す会

 当面する攻防の焦点は、直近の大会での代議員数、しかもわずか1人差をめぐる組織戦にならざるをえない。
 だが鉄建公団訴訟を大衆的に堅持し、国労本部の官僚統制に対峙して国鉄闘争の新たな勝利的展望を切り開くには、闘う闘争団に対する兵糧攻めを跳ね返す支援体制の確立とともに、4党合意に反対する国労の本務組合員と闘う闘争団が連帯して争議を担う、全国的な、そして公然たる連携の広がりがこの攻防を制するだろう。なぜなら、国家的不当労働行為と対決する国鉄闘争は不当解雇された闘争団員だけの闘いではなく、労働組合の死活をかけた闘いだからである。
 こうした課題に応える支援組織「国鉄闘争共闘会議」は、本誌前号で報じたように4月中旬に結成されたが、臨時大会の招集が確実と見られはじめた5月9日には、「生活援助資金の凍結と闘争団の統制処分に反対」する本務組合員と闘争団員が連携して「国労に人権と民主主義を取り戻す会」(以下:取り戻す会)が結成され、闘争団への生活援助金凍結指示の撤回、闘争団処分の査問委員会の解散、闘争団の大衆運動からの排除など差別的扱いの停止など6項目を国労本部に要求する決議文を採択して活動を始めた。
 この会は、その目的に「国労本部による組合民主主義の破壊と組合員への人権弾圧に反対し、形骸化した組合員民主主義を克服し、本当の労働者の為の団結と連帯を回復するために活動を行う」ことを掲げているが、そこには4党合意をめぐる攻防を通じて暴露された、派閥政治に覆われた国労組織の弊害を克服しようとする傾向をはらんでおり、その意味で国鉄労働組合の創造的再生運動の可能性を含んでいると思われる。
 つまり争議当事者の意志を踏みにじる「組合民主主義の破壊と組合員への人権弾圧に反対」し「形骸化した組合員民主主義を克服」する運動は、結局のところ政党と癒着して裏取引をする官僚主義が争議当事者の自己決定権を否定したり、役員ポストや代議員の配分を「学校」と呼ばれる派閥の談合で決めるなどの民主主義の形骸化を打破する以外にはないからである。

最も広範な反本部派の結集を

 もちろんこうした意識が、取り戻す会に広く浸透しているとは今の段階では言いがたいかもしれない。
 だがそうであればこそ、こうした意識の萌芽をはらんだ、組合員自身による自発的な国労再生運動の可能性に対して、階級的労働者はあらゆる助力を惜しまないだけでなく、より能動的な協働のために連携を求めなければならないのも明であろう。
 とくに当面の攻防の焦点が、動揺する中間派代議員をめぐる右派連合と左派の争奪戦的攻防となることが予測される以上、少なくとも昨年の「一票投票」で4党合意に反対もしくは白票を投じた組合員の大半を、闘争団に対する統制処分に反対する勢力として獲得するために、これまでの経緯にとらわれない大胆な協働の提案や実践が求められていることは明らかだと思われる。
 そうであれば、86年の修善寺大会ですべての左派勢力を結集する最も柔軟な連携と協働が追求され、それが実現されたことで大衆的な国家的不当労働行為と対決する戦線が形成される突破口が切り開かれたと同様に、階級的労働者がこの正念場を勝利的に闘いぬくために必要な戦術の行使を躊躇する理由はないだろう。   (きうち・たかし)


●以下のHPには、臨時大会の詳細な報告や関連情報が掲載されています。
▼がんばれ国労闘争団
http://www1.jca.apc.org/ouen/
▼たたかう国労闘争団
http://www.h2.dion.ne.jp/~tosodan/
▼国鉄闘争共闘会議
http://www.h4.dion.ne.jp/~tomonigo/


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