不当な勧告をのりこえて、国際的多数派との連携へ
●ILOは、たたかいの舞台●


 11月17日、国際労働機構(ILO)結社の自由委員会理事会は、国労と全動労および国際運輸労連(ITF)が共同申し立て人となって申し立てていた,採用差別事件に関する苦情に対する勧告を採択した。
 それは昨年11月の「中間勧告」から一転して、不当動労行為が存在しなかったという誤った前提に立ち、さらに争議当事者が反対を唱えている「4党合意」を関係者が受け入れるよう求める内容であり、本紙前号(114号)の「確信の持てない右派の脆弱さと国鉄闘争の『失われた時間』」で、勧告内容を詳細に検討する時間を持てない状態でわれわれが試みた評価のなかで指摘した「公正な補償」の保証と言う原則の確認も、全体の内容とは整合性のあるものとは言い難い。
 新しいILO勧告は、われわれの推測を越えて多くの過ちと不当な判断を含んだ、容認し難い勧告であった。

組合差別を否定する認定

 もちろんILOは公益委員、使用者側委員、労働者側委員の三者で構成される「国際的な労働委員会」(正確に言えば日本の労働委員会が、ILO条約の批准にともなう国内的措置として設立されたものだが)に他ならないから、それは闘いの場である。
 そうである以上、いずれか一方の当事者が反論を手控えたり闘いを放棄すれば、相手方に有利な裁定や勧告が、今回の場合は日本政府に有利な勧告が採択されるのは自然の成り行きである。そして中間勧告からほぼ1年の間、とくに4党合意が明らかになった5月末以降の半年間は、国労の本部が4党合意を歓迎する態度に終始してILOに対する働きかけを放棄してきたことを考えれば、ILOが4党合意の受け入れを勧告するのはそれほど不可解なことではない。そしてあえて言えば4党合意承認の可否は、なお決着のついていない「今後の課題」に過ぎない。
 むしろ今回の勧告の最大の問題点は、国鉄分割民営化の過程で生まれた大量の不採用者の存在が、所属組合を理由とした採用差別という不当労働行為のためではなく、「その理由の一部が、国労および全動労執行委員会が『国鉄改革反対』および『現職復帰』の組合路線を優先したことにある」(勧告352項)との認識を示したことにある。
 こうした不当な勧告が採択されたのは、中間勧告が出されて以降、日本政府(運輸省と労働省)が提出した追加情報が、故意に事実を誤認させるような作為に満ちたものであったことが決定的である。それは勧告文の(C)「政府の回答」を検討した各項目(同342-370項)において明白である。

国際連帯の舞台−ILO

 そのうえで、国鉄闘争の初期の段階で、国労が地方労働委員会に不当労働行為の救済申し立てを行い、ここに闘いを集中して次々と救済命令を勝ち取り、これを大きなステップにして以降の長期争議を闘い抜いてきたことを顧みるまでもなく、ILO勧告を求めた闘いが無駄だったわけではないし、また今回の勧告内容に失望して、この闘いを簡単に放棄すべきでもないと思われる。
 なぜならいま、ILOで行われている国家的不当労働行為をめぐる攻防は、ひとりJR労働者の労働権や基本的人権への侵害をめぐる問題ではなく、グローバリゼーションを促進する多国籍資本が、国際的規模で行っている基本的人権や労働権の侵害に連なるものであり、これに対抗して、国際的な労働基本権(中核的労働基準)の遵守を国際的規制として求める大衆的運動が、等しく求めていることでもあるからである。
 ITFが、国労と全動労のILOへの苦情申し立ての共同申し立て人となり、その闘いへの全面的支援を表明してきたのも、多国籍資本や国家による不当労働行為への規制が必要だとする見解が、国際自由労連(ICFTU)内でも大きな力を持ちはじめていることの反映なのであり、むしろ日本最大のナショナルセンター連合は、むしろこうした国際的流れから大きく立ち遅れているのだ。
 今回のILO勧告に反論し、新たな追加勧告を求めるなりを含めて今後もILOを舞台とした闘いを継続することは、そこでの公正な勧告を求めるだけではなく、この闘いを通じて国鉄闘争が、グローバリゼーションと対決する、いまやICFTUでも大きな力をもちはじめている国際的な運動との連帯を実現しようとする闘いなのである。
 それはなお国内的にも国際的にも厳しい孤立を強いられている国鉄闘争が、近い将来において、グローバリゼーションと対決する国際的な多数派の運動と闘いに連帯して、解体されつつある企業社会にしがみつき、雇用さえ守れなくなりつつある連合型労働運動を克服する、新たな労働運動の先頭に立つ可能性を切り開くだろう。        

(F)


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