6.24反盗聴法集会に8000人が結集
国家・社会再編が促進する連合・民主党の流動と分解
新たな政治再編を見据え、労働者の統一した隊伍を


画期的な盗聴法反対集会

 6月24日、東京・日比谷公園の野外音楽堂で「許すな盗聴法!6・24大集会」が、佐高信や田中康夫らの呼びかけによる実行委員会の主催で開催され、主催者発表で8千人と、盗聴法反対運動の集会としては最大規模の盛り上がりをみせた。
 この集会の最大の特徴は、民主党の管代表、共産党の不破委員長、社民党の土井党首の三野党の党首をはじめ、さきがけの武村正義代表、二院クラブの佐藤道夫代表、国民会議の中村敦夫参院議員らがそろって壇上にならび、それぞれ盗聴法案の危険性を訴えてその成立に反対することを表明したほか、連合の笹森事務局長のメッセージが読み上げられ、全労連、全労協の代表もそれぞれ盗聴法案に対する厳しい批判と闘いの決意を明らかにしたことに示されたように、3つの労働者全国組織と自民、自由、公明3党による連立の動きに警戒を強める野党各党・各会派が一同に会した公然たる集会だったことである。
 それは、革マル派や中核派といったセクト主義者が懸命の介入を試みてひんしゅくをかったことを除けば、一昨年の11月27日、労基法改悪反対を掲げて連合、全労連、全労協が一同に会した大衆集会が開かれ、以降の労基法改悪反対運動の大衆的高揚の端緒となったとことを彷彿とさせる集会だった。しかもこの類似は、はもちろんただの偶然ではない。というよりもこうした政党やナショナルセンターの垣根を越えた大衆行動の成立は、日本帝国主義の国家・社会再編が、グローバル経済への対応という新しい課題にそったものとして本格化しはじめたことを基盤に、総評の解体以降固定化されてきた労働者階級の分裂とそれに対応した政党再編が、次の新たな再編に直面し始めたことを示唆する共通した現象だからである。
 この新たな政治再編における焦点はなお自民党であり、労働者的政治勢力という主体形成にかかわって焦点になるのは、先の政党再編の過程で消滅した社会党に代わって、さきがけ、民政党、社会党、友愛会議という4党派の野合状態をいまだに引きずる民主党の内部流動化、とりわけ連合の組織内議員たちの動向である。

民主党の誤算と分散化

 自自公連立政権が正式に発足することが確実となった現在、アメリカ的な二大政党制をモデルにして、「政権担当能力」を売り物に自民党政治に対抗するはずだった民主党はしかし、一向に自民党政権に代わりうる政党としての体裁すら整えられず、むしろ管代表の人気に陰りが見え始めたことによって、その求心力の低下が現れはじめている。それは4月に行われた東京都知事選挙で、公認候補として擁立した鳩山が無所属候補の石原に遠く及ばなかったばかりか、無党派を標榜する升添にすら及ばずに惨敗を喫したことで、むしろ加速されたと言える。
 この民主党の低迷と求心力の低下は、もちろん前述した旧4党派がいまだ野合状態のうえに、約50人の議員を擁する党内最大勢力の旧社会党系と他の勢力の間になお深い溝が存在し、とくに安全保障問題を焦点とする外交や防衛といった基本政策について、党内の不協和音と足並みの乱れが一向に収拾されそうにないからであり、政党不信を強める新無党派層にとっても、なにか期待を抱かせる存在としては見えていないからである。
 そして民主党にとってのもうひとつの誤算は、企業と一体化した巨大労組の組織力を背景に、都市部における強力な選挙基盤を提供するはずだったナショナルセンター連合が、民主党支持で内部を一本化できないばかりか、旧総評系と旧同盟系の政治組織を一本化することにさえ手間取り、民主党の選挙体制をバックアップする役割をほとんど果たせていないことである。

連合政治センターのごまかし

 6月17日、熱海で開かれた連合の政策・制度中央討論集会で鷲尾会長は、「民主党を基軸に自民党に代わりうる政治勢力を育て上げることで、連合の政策実現が近づくことは間違いない」と強調したが、現実の連合は、組織内議員が所属する政党ですら民主、社民、自由と別れ、旧同盟系労組の中には、新生党時代に実現した公明党との選挙協力を現在も続けていることろもあるのが実情であり、そうした利害に背を向けてまで民主党支持を決めねばならない理由は、それぞれの組織事情からは全く考えられない状況がある。
 こうした状況の中で5月下旬、旧総評系労組の政治組織である民主・リベラル労組会議と、旧同盟系の政治組織である友愛会がそれぞれ解散し、前者は「平和運動フォーラム」に、後者は「友愛連絡会」という親睦団体に改組され、連合内の政治組織は、秋の定期大会で「連合政治センター」(仮称)に移行することが決定されることになった。この連合内政治団体解散の動きは、連合としての政治方針や政党との関係の見直し作業に伴うものだが、連合政治委員会の5月中間報告では、かつての政権構想であった「自民党に代わる政権を担いうる新しい政治勢力の結集」との文言から「自民党に代わる」を削除したことに端的に示されたように、見直し作業自体がむしろ連合の政治的分散化傾向を追認したと評されるありさまである。実際に、旧総評系と旧同盟系の新しい親睦団体が政治組織の隠れみのであることは、誰の目にもあきらかなごまかしに過ぎないのである。
 だがこうして民主党は、鷲尾会長の期待や掛け声とは裏腹に、個々の議員の利害とその出身母体となった単産単組の利害に沿って分散化し、それがまた連合の政治的求心力の低下として跳ね返ることになる。
 しかもこの出身母体の利害、とりわけ労組産別組織の利害関係は、単なる選挙上の利害にとどまらない。というのも、すでに春闘での賃上げや一時金をめぐる労資交渉において、産別自決を名目とした連合労働運動の求心力の低下は歴然たる事実だが、それは個別資本と癒着した労働組合が、それぞれの資本の利害に沿って行動するという、JC派に典型的な連合労働運動の必然的帰結ではある。こうした連合の行動様式は、経済成長が持続している間は労働条件改善の「横並び」をある程度保障してきたが、利潤率(搾取率)をめぐる競争の激化が熾烈になる今日のような金融・産業再編の局面では、癒着している個別資本の生き残りのために、ナショナルセンター全体の利害以上に産別組織の利害が、はては個別企業の利害を優先することを労働組合に余儀なくさせるのである。
 したがってそうした利害の対立が、政治的上部構造である民主党という政党に反映されるのはむしろ必然的なのである。

連合と民主党の流動化

 しかしそれと同時に、最大のナショナルセンターである連合の傘下には、連合主流派であるJC派のように、独占資本との癒着によって労働者を支配する労組官僚ばかりではなく、資本からそれなりに独立的な労働者組織を基盤にして、資本との取引をしてきた労働組合が含まれているのも現実である。労基法改悪反対闘争で連合本部を突き動かしたゼンセン同盟、金属機械などの産別組織や、先の新ガイドライ法に公然と反対した海員組合と全港湾の共闘などは、労働者大衆の独立的な組織に依存している度合いに応じて、そうした産別組織が階級的利害に反応せざるをえないことを示しているのである。
 そしてこの点にこそ、連合の内的分岐を反映する民主党を、労働者組織の共同行動に巻き込まねばならない理由がある。なぜならこうした大衆的運動のひとつひとつが、民主党というブルジョアリベラリズムを標榜する政党の欺瞞を暴き、そのイデオロギー的政治的影響から労働者大衆を切り離す可能性を与えるだけでなく、この党の内的流動と政治分解を促進する可能性をも広げることになるからである。実際に冒頭で紹介した6・24集会でも、民主党の管代表は自民党系議員たちの「共産党との同席」に対する強い反発に直面し、一時は集会への出席を取りやめようとしたとも言われており、連合の笹森事務局長にしても、連合内の共産党への強い反発に配慮して、集会への出席を取りやめてメッセージに切り替えたという。
 こうして階級的労働者は、民主党の政治分解を促進することになる国家社会再編の新たな進展に注目し、労働者的政治勢力の基盤となる労働者階級の統一した隊伍の形成をめざして、労基法案反対集会が垣間見せた可能性を発展させるために闘うだろう。

  (さとう・ひでみ)


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